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⑬ライバルは突然牙をむく。
月夜の初恋をぶち壊した。
だから俺はその報いを受けなければならない。
「……ごめ、なさ……。ごめ、なさ……」
怖くて――。
怖くて――。
俺の体が震える。
俺は唇をぐっと噛みしめて、月夜の冷たい言葉と視線を一身に受け止めた。
「言いたいことは、それだけか」
もう一度、月夜が言葉を投げかけた。
ああ、あんなに優しかった月夜をここまで怒らせてしまった。
――月夜が好きだった。
違う。
今だって好き。
でも、月夜はもう、あの優しい笑顔を俺に向けてはくれない。
覚悟して目をつむれば、月夜の優しい笑顔がまぶたの裏に焼きついている。
……もう、永遠に見ることのできない、月夜の微笑が――。
「ごめ、なさい……」
自分の立場を理解せず、浅はかにも恋心を抱いてしまった俺が悪い。
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