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⑲ライバルは突然牙をむく。
俺の中でいろいろな気持ちが交差する。
どうしよう。
どうしたらいい?
俺は月夜に答えを求めて彼のブレザーを握りしめた。
「どうぞ。俺はかまわない」
藤堂の警告を月夜は気にしていないようだった。
平然と俺に笑みを浮かべながら、そう答えた。
まるで、『藤堂は眼中にない』そう言っているようだ。
「――!!」
藤堂は最後にもう一度俺を睨むと、走り去った。
「…………」
夢みたいだ。
信じられない。
月夜と両想いになれるなんて……。
幸せすぎてついつい今を疑ってしまう。
残された俺は月夜の熱視線を受けながら、彼の腕の中で放心状態だ。
「亜瑠兎……やっと君を俺のものにできる」
すべてを見透かすような瞳が、俺を捕らえる。
もう身動きどころか呼吸さえもままならない。
「あ、あのっ!! 月夜……」
どうしよう。
嬉しすぎて何を話していいのかわからない。
「逃がさないよ、亜瑠兎」
「っはぅ……」
口角が上がっている。
月夜は今までに見たことのない笑みを浮かべた。
《第12話・ライバルは突然牙をむく。・完》
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