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②思い=想い。

「その日から、俺は事ある毎に祖父の目を盗んで一枚の写真を盗み見していてね、ある日、とうとう祖父に見つかってしまったんだ」  月夜は俺に惚れた経緯を話してくれている。  だけど俺は……。  なんていうのかな。  ふわふわした夢見心地な気分になっていて、冷静に話を聞ける状態じゃない。  ――ああ、やっぱり月夜は綺麗だ。  窓から差し込む夕日の紅が月夜の輪郭をなぞっている。  いや、それだけじゃない。  蜂蜜色の髪はそよぐ風に遊ばれて、シルクでできたカーテンのように揺れている。  俺……この髪も好き……。  俺は綺麗な髪に手を伸ばし、風に揺らぐひと房をそっと掴んだ。  触れてみれば、思っていたとおりだ。  滑らかな肌触りをしている。  この気持ち。  どう言い表せばいい?  キュン。  胸が締めつけられる。  だけど苦しいものじゃない。

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