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④思い=想い。
あまりにも胸がドキドキしすぎて声が裏返ってしまう。
「あのね、亜瑠兎 。あまり俺を困らせないでくれるかな」
ハの字になっている月夜の眉。
どうやら本当に困っているみたいだ……。
「俺は君を抱きたいと思う気持ちをなんとか抑えて、君のことをどれだけ想っているのかを伝えようとしているんだよ? それなのに、君はそうやって俺を誘惑してくるだろう?」
ただでさえ、間近に月夜がいてドキドキしているのに、月夜がそんなことを言うから、さっきよりも、もっとずっとドキドキする。
胸が震えて呼吸がうまくできない。
「誘惑なんてし……」
「『――てない』とは言わせない」
反論しようと口を開けば――。
月夜は俺の言葉を遮った。
「俺の髪を掴んだと思ったら、その可愛い唇でキスをして、しかも目を細めて微笑むだろう? どこからどう見ても俺を誘惑しているようにしか見えない」
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