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⑤思い=想い。
「んなっ!?」
可愛い唇ってなに!?
ちょっと月夜、俺を美化しすぎだろ?
だいたい微笑って、俺そんな笑い方知らないし!
できないし!!
「俺、そんなふうに笑ってない!!」
「いいや、微笑んでいたね」
「たしかに、もしかしたら笑ったかもしれないけど……でも俺、月夜が言うほど綺麗じゃないしっ!!」
そもそも月夜を誘惑できていたら片想いで悩んでないし!!
俺が否定して――。
月夜も否定する。
いくらか繰り返すやり取りに、月夜は飽きたらしい。右の口角だけをつり上げて笑った。
「……へぇ~、そう言い切れる?」
あの~、月夜さん?
なんかその笑顔。
ものすごく怖いんですけど……。
だけど、だけどさ!
俺、誘惑なんてしてないし!!
絶対折れないぞ!?
「言い切れる! 月夜の目がおかしいんだ!」
言い切った!
俺は怖じ気づきそうになるのをなんとか堪え、断固として言い切った。
「おかしいで結構」
「……っ!!」
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