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⑦思い=想い。

「お祖父さまは、俺が見ていたのは花音ちゃんだと思ったようでね、遺言を言い渡された時はさすがにどうしようかと思ったよ。放棄する方法ばかり考えていたんだ。それなのに、君と対面した時は驚いた。だって、あの真っ直ぐな目を向けてくる君が俺の花嫁になるっていうじゃないか。どれだけ嬉しかったか、君はわかるかい?」  なに?  もう、わかんない。  月夜は訊いてくるけどさ、俺はやっぱりきちんと話が聞けない。  だって、だってだって!  俺、月夜にキスされたし!  いや、これが初めてじゃないけどさ。  だけど俺にとって月夜とのキスはいつだって特別なものだ。  それに……。  腕をどうにかしたい。  なんかすごく恥ずかしいんだ。  だから俺は自由を奪われた腕をなんとか引き抜こうと、必死に体をよじるわけで……。  そんな俺を尻目に、月夜は落ち着いた口調でまた続きを話しはじめる。  ちょっと、月夜!  俺、力いっぱい抵抗を図っているっていうのに、びくともしない。  抵抗する俺の力さえもどうということはない。  月夜はそう言っているかのようだ。  ……なんか腹立つな。  同じ男同士なのにさ!!

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