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⑨優しい王子様との付き合い方。

「やだっ! 見るなっ!!」  泣きそうな顔を見られたくなくて、いっそう体を丸める俺。  だけど月夜は見た目よりもずっと力があるんだ。  顔を覆っていた俺の両手が容易く解かれてしまう。  そうして見られるのは、悲しみで歪んだ俺の顔だ。 「亜瑠兎? どうして泣いて……」 「――っ、俺、月夜とこうしているだけでも恥ずかしいのに、でも月夜は平気で……好きなのは俺ばっかりだから……」  悲しくて、悲しくて……。  気持ちを告げると涙が溢れてくる。  悲しみに捕らわれていると、月夜は驚いたように口を開いた。 「君ばかり? そんなに平気そうに見える?」  言うが早いか、突然俺の右手が月夜に奪われた。  俺の右手はそのまま月夜の胸元に押し当てられた。  トクン。  トクン。  月夜の心臓は俺と同じくらい、大きな鼓動を繰り返している。  俺の右手を通して彼の心音を感じる。

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