223 / 305
⑨優しい王子様との付き合い方。
「やだっ! 見るなっ!!」
泣きそうな顔を見られたくなくて、いっそう体を丸める俺。
だけど月夜は見た目よりもずっと力があるんだ。
顔を覆っていた俺の両手が容易く解かれてしまう。
そうして見られるのは、悲しみで歪んだ俺の顔だ。
「亜瑠兎? どうして泣いて……」
「――っ、俺、月夜とこうしているだけでも恥ずかしいのに、でも月夜は平気で……好きなのは俺ばっかりだから……」
悲しくて、悲しくて……。
気持ちを告げると涙が溢れてくる。
悲しみに捕らわれていると、月夜は驚いたように口を開いた。
「君ばかり? そんなに平気そうに見える?」
言うが早いか、突然俺の右手が月夜に奪われた。
俺の右手はそのまま月夜の胸元に押し当てられた。
トクン。
トクン。
月夜の心臓は俺と同じくらい、大きな鼓動を繰り返している。
俺の右手を通して彼の心音を感じる。
ともだちにシェアしよう!