224 / 305
⑩優しい王子様との付き合い方。
「ね?」
首を傾けてにっこり微笑む月夜は、目尻に溜まった涙を親指でそっと拭い取ってくれた。
……月夜。
好き。
すごく好き。
「……っつ」
たうさんの好きが溢れ出す。
俺は月夜の胸に顔を埋めた。
自分ばかりが好きなんじゃないって実感したら嬉しくて、唇がゆるむ。
「……困ったな」
俺の胸に、またあたたかな熱が灯りはじめた頃、月夜はぼそっとつぶやいた。
いったい何が困ったのだろう?
月夜の顔をそっと窺えば――。
「そういう仕草がね、誘ってるっていうんだよ? 自覚ある?」
彼は苦笑を漏らし、そう言った。
「っな!!」
月夜との距離が近い。
俺はけっして月夜を誘惑しているつもりはない。
ただ、月夜とくっついていたいって思っただけだ。
それなのに、月夜は意地悪だ。
歯の浮くような恥ずかしいセリフを何度も言われたら、俺は素直じゃいられなくなる。
ともだちにシェアしよう!