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⑩優しい王子様との付き合い方。

「ね?」  首を傾けてにっこり微笑む月夜は、目尻に溜まった涙を親指でそっと拭い取ってくれた。  ……月夜。  好き。  すごく好き。 「……っつ」  たうさんの好きが溢れ出す。  俺は月夜の胸に顔を埋めた。  自分ばかりが好きなんじゃないって実感したら嬉しくて、唇がゆるむ。 「……困ったな」  俺の胸に、またあたたかな熱が灯りはじめた頃、月夜はぼそっとつぶやいた。  いったい何が困ったのだろう?  月夜の顔をそっと窺えば――。 「そういう仕草がね、誘ってるっていうんだよ? 自覚ある?」  彼は苦笑を漏らし、そう言った。 「っな!!」  月夜との距離が近い。  俺はけっして月夜を誘惑しているつもりはない。  ただ、月夜とくっついていたいって思っただけだ。  それなのに、月夜は意地悪だ。  歯の浮くような恥ずかしいセリフを何度も言われたら、俺は素直じゃいられなくなる。

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