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⑧悲しい想いを秘めて。

 月夜には気づかれない。  きっと――……。  若干の不安を覚えつつも、月夜に余計な心配をかけたくない俺はどうにか平静を装い、ソファーに腰掛け直した。  その直後、まるで見計らったかのように、軽やかな足音がすぐ近くで聞こえた。 「亜瑠兎?」  背中越しから月夜が俺を呼ぶ。  平静を装おうとしたけど、やっぱ無理。  悲しい気持ちを抱いている俺は、月夜の声に反応して大きく震えてしてしまった。  それでもなんとか振り向けば、月夜は目を丸くしてこちらを見つめている。  しっとり濡れている水気を含んだ艶やかな蜂蜜色(はちみついろ)の髪。  バスローブに身を包んでいる月夜は上がったばかりだからだろう、象牙色(ぞうげしょく)の肌がほんのり赤みを増している。  なんていうか……。  男の色香、っていうの?  入浴直後の月夜は普段以上に綺麗だ。

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