233 / 305
⑧悲しい想いを秘めて。
月夜には気づかれない。
きっと――……。
若干の不安を覚えつつも、月夜に余計な心配をかけたくない俺はどうにか平静を装い、ソファーに腰掛け直した。
その直後、まるで見計らったかのように、軽やかな足音がすぐ近くで聞こえた。
「亜瑠兎?」
背中越しから月夜が俺を呼ぶ。
平静を装おうとしたけど、やっぱ無理。
悲しい気持ちを抱いている俺は、月夜の声に反応して大きく震えてしてしまった。
それでもなんとか振り向けば、月夜は目を丸くしてこちらを見つめている。
しっとり濡れている水気を含んだ艶やかな蜂蜜色 の髪。
バスローブに身を包んでいる月夜は上がったばかりだからだろう、象牙色 の肌がほんのり赤みを増している。
なんていうか……。
男の色香、っていうの?
入浴直後の月夜は普段以上に綺麗だ。
ともだちにシェアしよう!