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⑩悲しい想いを秘めて。
「――っ!!」
可愛いなんて男に向かって言う言葉じゃない。
言われても嬉しくないはずの言葉。
だけど好きな人からの言葉は特別だ。
月夜は俺が好き。
少なくとも、今はまだ。
恥ずかしい。
歯の浮くようなセリフを月夜は平気で口にするんだから。
顔が熱い。
『可愛い』が嬉しいと思うのは月夜だけ。
この愛おしい気持ちも――。
ぜんぶ月夜だけだ……。
月夜と同じ時間を過ごせば過ごすほど、ずっとずっと月夜を想う気持ちが増していく。
月夜、俺。
あなたが好き。
すごく好き。
恋心はいっそう膨らんでいくのがわかる。
だから両腕を伸ばして月夜に抱きついた。
「――亜瑠兎?」
珍しい。
月夜の声がひっくり返っている。
だけど驚くのも無理はない。
だって俺から月夜に抱きつくのはこれがはじめてだから。
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