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⑥悲しい想いを秘めて。
だって俺よりも先に家族と話していたなら、父さんたちから真っ先に連絡が入るはずだ。
俺の両親よりも嘉門さんの電話が先だったということは、きっとそういうことだ。
今はまだ家族に余計な心配をかけずに済む。
まあ、でも冷静に考えたらそれはそうかもしれない。
まがりなりにも月夜は俺の正体を見抜いていたにもかかわらず、俺を側に置いたんだ。
俺が、遺書に書かれている花音 本人だと言い張り、しかも月夜もそれを同意しているならば、力ずくではこの問題は解決しない。
嘉門さんは絶対に俺と月夜の仲を認めない。
だって同性での恋愛なんて馬鹿げているから……。
先祖の代から受け継がれている葉桜 という家柄が俺のせいで壊れていくのを見るのは耐えられないだろうから――。
明日の朝、すべての決着がつく。
明日――。
俺は月夜と別れる。
月夜のためを思うなら、これが正しい結末だ。
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