238 / 305

②俺が王子様のためにできること。

 俺は軽くシャワーを浴びるとクローゼットの中から花音(かのん)の服を引っ張り出した。  今日俺が選んだ服は、レースやフリルが大好きな花音にしては珍しい、パーカーとジーンズというシンプルなものだった。  ほぼ夜通し月夜に抱かれたことで重くて(だる)い体は悲鳴を上げている。  だけど、俺は月夜に抱かれたことを後悔していない。  むしろ今だってずっと月夜の吐息を感じたいと思っている。  このまま、別れなんて来なければいいのに……。  だけど最後にしなきゃ。  月夜の幸せを俺が潰しちゃいけない。 「今までありがとう。月夜、大好き」  寝室に戻り、眠っている月夜にそっと耳打ちすると、俺は重い足取りで葉桜家(はざくらけ)へと向かった。

ともだちにシェアしよう!