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⑤俺が王子様のためにできること。

 藺草の香りがする和室でひとり、嘉門さんを待つ。  障子から入り込んでくる陽の光は背中に当たってあたたかい――はずなのに。  体が冷たい。  凍るようだ。  いまだに俺の心臓は破裂してしまうのではないかと思うくらい、大きく鼓動している。 「――――」  いったいどれくらいの時間が経っただっただろう。  たった数分という短い時間なのに永遠とも思われる長さを感じた。  緊張でガチガチに固くなっている俺の前に、和服姿の男性が現れた。  短髪のところどころ白髪が混じっていて、鋭く射抜くような鷹のような目は威厳を感じさせる。  彼は華道葉桜家当主、そして月夜の父親である嘉門さんだ。 「待たせたね」  嘉門さんの野太い声が緊張と悲しみでガチガチに固まった俺の体に響く。  嘉門さんは物音ひとつ立てず、ローテーブルを挟んだ俺の前に腰を下ろした。やはりこの人は月夜の父親だ。嘉門さんの流れるような動きは見事で、月夜と同じ優雅だった。

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