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⑥俺が王子様のためにできること。
月夜の外見は嘉門さんよりはどちらかというと早苗さんに似ていると思ったけど、やっぱりふたりは親子だ。
二人は雰囲気がどことなく似ている。
「いいえ」
そんな嘉門さんを前にして、やっとのことで言えた俺の声は緊張で掠れている。
「わたしがなぜ君を呼んだのかはもう知っているだろう。前置きはなしにしょう」
「――つ」
ああ、月夜と一緒に過ごす時間が終わる。
膝の上で握った握りしめた掌はじっとりと汗が張り付いている。
コクン。
嘉門さんの言葉に打撃をうけながら、俺は静かに頷 いた。
「単刀直入に言おう。月夜と別れてくれ。祖父の遺書はなかったことにしてほしい」
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