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⑨俺が王子様のためにできること。
「そこで……だ。これを君に」
嘉門さんは袖の中から分厚い茶封筒を取り出し、ローテーブルの上に置いた。
「これ、は……?」
いったいどういうつもりだろうか?
差し出された茶封筒と嘉門さんを交互に見つめ、俺は尋ねた。
……なんだろう。
胸のあたりがとても気持ち悪い。
胃がムカムカする。
……吐きそう。
俺は膝の上に置いた拳をさっきよりもずっと強く握りしめる。
「これで月夜との出来事はすべてなかったことにしてほしい。今回のことは、遺書に背いた君たち家族の責任ではある。――だが、月夜は君の正体を知っていたようだし、おそらく君は月夜に……」
嘉門さんがそこまで言うと、眉をひそめた。
それはきっと嘉門さんが現実として受け止めたくない出来事なんだ。
嘉門さんの言いたい内容はわかる。
俺が、『月夜に抱かれた』ということを言いたかったんだろう。
だけどあまりの不快さになかなか言葉に出せず、口をんでしまったんだ。
わかっている。
俺の想いはいびつなものだって……。
自覚している。
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