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⑪俺が王子様のためにできること。
そして差し出された茶色い封筒。
その中身は見なくてもわかる。
きっと中身はお金だ。
この意味は、月夜が俺の体を奪った慰謝料 を支払うから、二度と月夜に会うなっていうことだろう。
「……俺は今後、二度と月夜さんの前には現れません。約束します。ですが、これは受け取れません。俺が身を引くのは金のためじゃない。月夜が幸せになってくれるために願ってすることだから……」
嘉門さんから見れば、俺と月夜の恋はほんの一時の気の迷いだと思うだろう。
だから全部、お金で解決すると思っているんだ。
たしかに同性相手に恋愛なんて馬鹿げていると自分でも思う。
実際、月夜と出会う前は、こんな恋愛があるなんて知らなかった。
だけど今は――。
この想いは真実。
俺にとってはかけがえのない、大切なものなんだ。
『お金はらない』
そう言った俺の言葉に嘉門さんは目を見開いた。
きっと俺が言ったことが信じられないんだろう。
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