247 / 305

⑪俺が王子様のためにできること。

 そして差し出された茶色い封筒。  その中身は見なくてもわかる。  きっと中身はお金だ。  この意味は、月夜が俺の体を奪った慰謝料(いしゃりょう)を支払うから、二度と月夜に会うなっていうことだろう。 「……俺は今後、二度と月夜さんの前には現れません。約束します。ですが、これは受け取れません。俺が身を引くのは金のためじゃない。月夜が幸せになってくれるために願ってすることだから……」  嘉門さんから見れば、俺と月夜の恋はほんの一時の気の迷いだと思うだろう。  だから全部、お金で解決すると思っているんだ。  たしかに同性相手に恋愛なんて馬鹿げていると自分でも思う。  実際、月夜と出会う前は、こんな恋愛があるなんて知らなかった。  だけど今は――。  この想いは真実。  俺にとってはかけがえのない、大切なものなんだ。 『お金はらない』  そう言った俺の言葉に嘉門さんは目を見開いた。  きっと俺が言ったことが信じられないんだろう。

ともだちにシェアしよう!