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⑫俺が王子様のためにできること。
たかが高校生の疑似恋愛。
子供の俺がそこまで考えていないって、きっと思っている……。
信じられないならそれでいい。
ほかの誰にも信じてほしいなんて、はなから考えていない。
打算だらけの恋。
だけどこれは俺の……真実だから。
「君は……」
「ひとつ、お教えいただけますか?」
今まで緊張感丸出しだった俺だけど、月夜とは最後になると覚悟すると、急に背筋が伸びた。
そんな俺を見た嘉門さんは、はじめてたじろぎを見せた。
俺はかまわず尋ねる。
「なんだ?」
襟元をただし、聞き返してきた嘉門さんの表情は、もうすっかり元に戻っている。
射貫くような眼差しが俺を見下ろす。
「月夜さんの許婚は、どなたになるんですか?」
「藤堂 御影 くんにするつもりだ。月夜の相手は父があんな遺書を残さなければ、はじめからそのつもりだったんだ」
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