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①『大嫌い』は大好きの裏返し。
◆第十七話◆
月夜 とはもう二度と会わない。
そう思っただけで、俺の胸が引き裂かれそうに痛む。
瞼 だって熱い。
なだらかな坂道がぼやけてくる。
俺は苦しい想いを胸に秘めたまま、月夜がいるマンションに戻っていく。
すべては月夜に別れを告げるために……。
月夜とは色々あったな。
思い返してみれば、はじめて会ったあの時から月夜に惚れていたんだ。
だって月夜を見た時、綺麗しか思い浮かばなかったんだから……。
料亭でふたりきりになって。
正座で足が痺れて月夜の目の前で転けて笑われて。
池にハマって……。
水ぶっかけて――。
転入早々なんて散々だった。
同性に襲われそうになって。
月夜に助けてもらって……。
あの時は月夜が王子様みたいに見えたっけ……。
そして。
俺は月夜が好きだって自覚したんだ。
両想いになって。
キスもした。
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