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⑥『大嫌い』は大好きの裏返し。
……だけどもう少し。
月夜の顔を見るだけで……。
声を聞くだけで、『別れよう』のたった4文字が言えない。
言いたくない。
でも言わなきゃ。
月夜と別れるって……。
ほら、言えよ!!
俺は臆病な自分を叱 りつける。
月夜がいるキッチンに入った。
彼はできたてのご飯を茶碗に盛っている真っ最中だ。
俺がキッチンに入ると、月夜が料理をしている最中ということもあってキッチンにはあたたかな熱気が漂っている。
キッチンの熱が悲しみで冷えきっている俺の体を包み込む。
だけど今はこのあたたかな雰囲気が邪魔だ。
このあたたかさが月夜と離れたくないという俺の気持ちに拍車をかけてくるんだ。
「月夜、あの……」
背中越しから話しかけた声が震えている。
しっかりしろ、俺。
月夜と別れるって決めたじゃないか。
今さらもう後戻りなんてできないんだよ。
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