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①俺だって!!
◆第十八話◆
秋。
紅葉の紅葉がいっそう深まる頃。
どこからか金木犀 の香りが漂ってくる少し肌寒い季節。
だけど、頬に触れる太陽の光は冬とは違ってまだあたたかい。
「………ん」
閉じていた瞼 を開ける。
すぐに真っ白な朝の光が差し込んできた。
陽の光が眩しくて目を細める。
そして俺は、俺のすぐ隣で眠っているだろう大好きな人を求めて手を伸ばす。
だけどそこには誰もいなかった。
「あれ?」
俺、ひとり?
俺は掛け布団を被ったまま怠い体を起こして見回せば――……。
だけどやっぱり俺が探している人の姿が見当たらない。
「月夜 ?」
あたたかな陽の光が差し込む中。
ぽつりと愛おしい人の名前を口にしても返事はない。
チュチチチ……。
あるのは小鳥のさえずりばかりだ。
「……つき、や?」
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