278 / 305

②ふたたびやって来ました月夜の実家。

「で……どうしよう……」  来るのは来た。  ……俺。  これから、どうすればいいんだろう。  時刻は10時30分。  俺は立派な門構えをしたその豪邸の前で立ち往生していた。  昨日は嘉門さんと会う約束をしていたから、素直にインターホンを鳴らせたけれど、今日は面会の約束を取りつけていない。  追い返される可能性、大だ。  しかも極め付きはこの桃色のワンピース。  馬鹿にしてるとしか思わないだろう。  月夜と強制的に別れさせられたらどうしよう。  ……あ、ダメ。  俺、ものすごく落ち込んできた。  自分の姿を見下ろし、しばらくの間ダメージをくらっていると……。 「あら? あなたは……亜瑠兎(あると)ちゃんね?」  門前でぽつんと佇む俺の後ろ。  ふいに声をかけられた。  その声はとてもおっとりとしている女性のものだ。

ともだちにシェアしよう!