279 / 305

③ふたたびやって来ました月夜の実家。

 振り向けば、そこにはワイン色の着物を着た、清楚な女性がいた。 「早苗(さなえ)さん……」  彼女は、そう月夜のお母さんだ。  早苗さんは買い物に行っていたのだろう。  大きなカゴバッグを持っていた。  俺の母さんと同じくらいの年齢だと思うのに、柔らかな笑顔を浮かべる早苗さんはとても綺麗で気品がある。  俺は早苗さんにペコリと頭を下げた。 「まあ、亜瑠兎ちゃん……以前会った時よりも、ずっと可愛らしくなったわねぇ」  にこにこ微笑む早苗さん。  ……えっと……?  俺、どう反応すればいいんだろう……。 「――――」  男の俺にとって、『可愛い』は褒め言葉じゃないんだけどなあ。  でも早苗さんは悪気があって言ってるわけでもなさそうだし……。 「――はあ、どうも……って!」  ちょっと待て!!  早苗さん。  俺のこと、『亜瑠兎ちゃん』って言わなかったか?  それってそれって、俺が男だって知っているってことだよな?  ――ということは、だ。

ともだちにシェアしよう!