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⑫ふたたびやって来ました月夜の実家。

「そ、そんなお礼を言われるようなことは何もっ!!」  早苗さんに誉められて胸の奥がむず痒い。  恥ずかしい反面嬉しくて……俺は顔の前でパタパタと手を振った。 「いいえ、そんなことはないの。だってあの子、変わったもの」 「変わっ、た?」 「ええ、以前は嘉門さんの言うことを何でも聞き入れる子だった。――無理もないわ。昔から、あの子はいつも華道家としてのノウハウを教えられてきたもの。厳格な父親に苦手意識を持つのは当たり前ね。月夜自身の意見は二の次で、あるのは葉桜として、どう動けばいいかということだけ……。だから月夜はいつの間にか消極的になってしまったの。けれど今は……。今は違うわ。自分の意見をはっきり口にできるようになっている。今日のことが良い例ね。月夜は今、嘉門さんに会って、自分の考えや思いを伝えようとしているわ」 「それって……」  いいことなのか?  首を傾げていると、早苗さんはそんな俺の背中を押して、家の中に招き入れてくれた。 「さあさ、こんなところで立ち話するのもなんだし、座ってゆっくり月夜と過ごした感想を聞かせてちょうだい? 亜瑠兎ちゃんのこと、もっと教えてほしいわ……」  《第19話・ふたたびやって来ました月夜の実家。・完》

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