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③あなたと俺の相愛数。
「早苗さん!! 俺、月夜にっ!!」
「はい、はい。では行きましょう」
早苗さんは、焦る俺を宥めると、俺の手を引いて和室を出た。
部屋を囲む長い縁側を進んで行く。
「…………」
俺は正直、すごく急いでいる。
いつもなら、こんなに大人しく着物なんて着せられたりしない。
だけど相手が早苗さんだとどうも調子が狂う……。
「今から何も言わないでちょうだいね」
早苗さんは綺麗な人差し指を口元に当てた。
『わかりました』
口を開けて返事をしようとしたけれど、直前に言われた早苗さんの言葉を思い出し、俺は慌てて両手で口を塞いだ。
それから早苗さんに大きく頷 いてみせた。
早苗さんが静かに障子を開ける。
そこは昨日、俺が嘉門さんと話をするために入った部屋だ。
ローテーブルに座布団ふたつ置いてある静かな部屋。
だけどそこには誰もいない。
月夜も嘉門さんもいないんだ。
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