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⑤あなたと俺の相愛数。

 もし、この勢いで勘当されちゃったら?  ほらよくあるじゃん。  時代劇とかでさ、貧しい生い立ちの女性に恋した若旦那が、一緒になりたいって父親に話を持ちかけた時の設定。 『勘当だ!』とかなんとか言われて、『ああ、そうかい。わかったよ。俺だってこんな分からず屋の父親と顔を合わせなくてすむんだ。せいせいしたぜ!』なんてノリで出て行く話。  月夜がもし、俺のせいでそんなことになったら、俺どうしたらいいの?  たまったもんじゃない!  俺は居ても立ってもいられなくなって、腰を上げた。  するとすぐに早苗さんの細い腕が伸びてきて、俺を制した。  なんで?  どうして止めるんだよ!!  早苗さんは俺と月夜とのことを認めてくれているんだろう?  味方なんだろう?  だったらどうして俺を止めるんだ?  俺は早苗さんを怪訝な目で見つめた。  だって月夜が苦しいのは嫌だ。  このことは俺にとっての問題でもある。  月夜だけの問題じゃない。  月夜に全部を押しつけるなんてそんなのダメだ!  早く月夜を助けに行きたくて焦る。  だけど早苗さんは微笑み返してくるばかりだ。  俺と早苗さん。  月夜と嘉門さん。  それぞれの空間に静かな沈黙が流れる……。

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