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第2話
「許さんぞ、ロザリア!!」
父さんの怒鳴り超え。
ハッとし、ヴィアンテに抱き上げられたまま、ボクは父さんを見る。
父さんは、懐からナイフを出す。
「お前はここから出られない! 出さない!」
「っ、ひっ」
「ロザリァァァァァアアアアアアアアア!!」
父さんは叫び、ナイフをボクに向けて投げた。
ヴィアンテは、僕を抱えたまま避ける。
「っぶね、何すんだよ」
「ヴィアンテ……。貴様も、この家から出られない。出さない! ハハハ、そうだ、貴様も売り飛ばしてやる!」
「残念。俺はここから出られんだよ」
ヴィアンテは笑い、部屋にある窓を割る。
「あんたがかけた呪いの内容は、この家の者をこの家に縛ること。呪いには、相手の名前が必要。だから、俺やロザリア、他の使用人も縛っている気でいるが。俺は他人に、真名を名乗らん」
「っ!?」
「ロザリア、目を閉じていろ」
驚く父さんを無視し、ヴィアンテは優しくボクに言う。
「少しの間、お前には見せたくない光景になるだろうから」
「は、はい」
ボクは目を閉じて、離れないように、ぎゅっと強くヴィアンテの服を掴んだ。
✟
音だけは聞こえる。
窓から落ちるように降りる音。
父さんの怒鳴り声。
銃声。
ヴィアンテは、ボクを守りながら、戦っているようだ。
「ちっ、さすがに血が足りねえ」
ヴィアンテの言葉に、ボクは疑問に思った。
彼は、ボクに出会ってから、誰かの血を吸っただろうか。
あの家にいた使用人は、全員吸われていない。
ボクも父さんも、吸われていない。
――ヴィアンテ、まさか……。
そう思ったとき、ヴィアンテはボクをそっと地面に置いた。
「ここに隠れてろ。誰か来たら、俺を呼べ」
「ヴィアンテ……。まさか、キミは」
「うるせえ、黙ってろ。すぐに終わらせる、あんなザコ」
安心しな、と優しい声で言うヴィアンテ。
彼の足音が遠くなったのを確認し、ボクは目を開ける。
そこには、何人もの死体があった。
怖く感じたが、それよりも。
遠くで、複数を相手する傷だらけのヴィアンテに、ボクは怖く感じた。
ボクのせいで、彼は死んでしまうのではないか。
――死なないで、ヴィアンテ!
ボクはそう思い、ふらつきながら、ヴィアンテの元へ行った。
彼を失うくらいなら。
ボクは、死んでも構わない。
そう思って行くと、目の前に兵士が現れた。
剣の先を向けられ、ボクは息を呑む。
――殺される。
でも、ここでヴィアンテを呼んだら。
彼が殺されるかもしれない。
「ヴィアンテを傷つけないで……!! 彼は、ボクを守ろうとしているだけ! それは、ボクの母さんとの約束だから!!」
だから。
だから――
言いかけた、そのとき。
僕に向かって、一弾の銃弾が向かってきた。
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