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第4話

「冗談は止せ。ロザリア……」  お前は死なない。  死なせない。  だけど、どうすれば……?  方法はある。  が、それをして良いのか。 「ちっ」  俺らしくない。  どうも、ロザリア絡みは、らしくないことしかしてない。  こんなにグダグダ余計な事を考える奴だったか、俺は。  違う。 「応急処置だ、ロザリア」  吸血鬼の血には、治癒能力がある。  大体の傷は治るが、失った血は戻せない。  俺は、自分の右腕を左手の爪で引っ掻き、血を出す。  そして、その血をロザリアの傷に当てた。  傷に、血が当たった瞬間から、傷は治ってゆく。  数秒待てば、元通りになった。  だが、ロザリアは目を覚まさない。  血を失いすぎたのか。  俺には、あまり判らない。 「ロザリア……、少し疲れたんだな。ったく、お前は本当に身体が弱い」  呼吸しているような音が、あまり聞こえない。  死んだのか?  死んでしまったのか?  いや、そんなはずは……。  そっと、ロザリアの頬に触れると。  冷たくなってきていた。  人間の死体は冷たい。  そんなこと、よく知っている。 「は……?」  おい、待て。  待てって。 「ロザ……リア……?」  死ぬな。  死ぬなって。 「ロザリアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――!!」 ✠  頭が真っ白になった。  訳が判らない。  解りたくない。  こんな感覚は、初めてだ。  何だこれ。  何もかもを失ったような感覚だ。  両親を殺されたときには、なかったのに。  俺を好きだと言った女が死んだときもなかった。  初めてだ。  ロザリア。  俺は、どうやら本気でお前に惚れてしまっていたらしい。  だから、俺はお前を死なせる予定は、永遠にないんだ。  悪いな。  俺は、ロザリアに笑いかける。  そして、ロザリアの首筋に牙を当てた。  今は少しだけ。  食事の意味で、血をいただく。  全てが終わったら。 「永遠に愛している(Ti amo per sempre)」 ✠  そっと、ロザリアを地面に置き、俺は立ち上がり「おい」と雑魚共に訊く。 「ロザリアを撃ったのは、誰だ……?」  俺の問いに、答える者はいない。  そうか。  まあ、ここにいるのは、全員雑魚。 「答えねえなら、全員食い殺す」  俺の台詞に、雑魚共は怯える。  が、関係ない。  とりあえず、近くにいる奴から。  一人、一人。  とはいかず。  まとめて何人かを相手した。  悲鳴も聞こえたが、そんなのただの雑音。 「うるせえな」  と、俺は殺した。  頭にあるのは、ロザリアのことだけだった。  それ以外、どうでも良かった。 ✠  数分で、全ては終わった。  俺は、そっとロザリアを抱き抱え、その場を去った。

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