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第5話
ふわふわして、柔らかいものの上にボクはいる。
天国のようだ。
一体、何だろう。
真っ白な天井と床。
だけど、壁は黒。
変なところ。
きっと目の前にあるのは、天井。
ボクは、寝ていたみたいだ。
「よいしょ……」
起き上がり、ボクは辺りを見る。
「ヴィアンテ……」
会いたい。
最期、彼は泣いていた気がする。
――ヴィアンテ…………。
「あ」
そういえば、身体の傷……。
何もない。
綺麗になっている。
「…………」
何で?
一体、何があったんだろう。
気になったけど、今はそんなことしている暇じゃない気がした。
「ヴィアンテ」
もしかして、キミが?
キミが、治してくれたの?
なら、早くお礼を言わないと。
そして、改めて言おう。
ボクの気持ちを。
早くこの部屋を出て、会いに行こう。
そう思って、走り出した。
だけど、壁から真っ黒な手のような物が出てきて。
ボクを捕まえようとする。
「嫌だ! ボクは、ボクは!!」
ヴィアンテに、伝えたいことがあるんだ。
「ヴィアンテと、ボクは生きるんだ! どんな形になっても!!」
そう叫んだとき。
ボクの視界は、光に包まれた。
✟
ハッと、目を覚ますと。
そこは、全く知らない場所だった。
「えっと、ここは……?」
ボクが呟くと、少し離れたところから、ヴィアンテの声が聞こえた。
見てみると、そこにはヴィアンテがいた。
「ヴィアンテ……?」
ボクが聞くと、ヴィアンテは頷き、ボクを抱きしめる。
「ロザリア、良かった」
「え……」
「……あと、悪い。応急処置とは言え、お前に吸血鬼の血を――」
「ヴィ、ヴィアンテじゃないみたい! 誰? ヴィアンテは、謝ったりしないし、もっと、もっと……、ワガママで、ドSなんです!」
らしくない。
ヴィアンテらしくないんだ。
ボクに謝るなんて。
「ボクのヴィアンテじゃない」
ボクがそう言うと、ヴィアンテはハッとしたような顔をし「くくっ」と笑う。
「俺らしくないな、本当に。ハハハ、全く、お前といると俺らしいことができない」
「…………」
「ロザリア、ここから先、お前はまた誰かに殺されかかると思う。だが、俺はお前が死んでも良いと言っていない」
「…………」
ああ。
ヴィアンテだ。
ヴィアンテだ。
「うん」
ボクは、頷く。
「ヴィアンテが、守ってくれるんですね」
「仕方ねえからな」
「……よろしくお願いします」
「何、嬉しそうな顔をしてるんだ」
「……何でもないです」
秘密だ。
ヴィアンテが、ボクを守ってくれる。
ヴィアンテと、一緒にいられる。
それが嬉しいなんて。
ヴィアンテには、秘密だ。
「これから、どこに行くんですか?」
「その前に」
ヴィアンテは、そう言ってボクにキスをする。
「そう簡単に倒れられたりしたら困るんだよ」
「……え?」
「こういう意味で血を吸うのは、初めてだけど。良いよな?」
「え、ちょっ、ヴィアンテ……?」
えっと、どういうこと?
どうして、ボク、ベッドの上で押し倒されているの?
あと、その、ヴィアンテ、ズボンとパンツを下ろしているんだけど。
で、ボクもズボンとパンツを下ろされたんだけど……?
「ぼ、ボクは男だよ……?」
「一つ、教えてやる。お前の特殊能力は、触れた者に好意を抱かれるというものだ」
「へ……?」
「つまり、俺はお前に惚れている。お前も俺に惚れている。拒否する理由はあるか? ガキじゃあるまい」
な? と、笑うヴィアンテに、ボクは少し怖いと感じたが、それとは別の感情が、ボクを支配しようとしていた。
――もう良い。
全て、ヴィアンテに委ねよう。
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