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つまりは好奇心

──それからだ。  俺は最近、課長のプライベートの様子がどんなものなのか、少し気になっている。  仕事中は普通にいつもどおり恐いし、気軽に雑談できるような雰囲気でもない。  それは俺だけでなく、他の同僚もそう思っていることだろう。  なんせ彼は“話しかけるなオーラ”がすごいから。  業務連絡なら問題ないんだけれど、不用意に仕事以外の話をしたら怒られそうっていうか、そもそも相手にしてもらえなさそう。  とにかく、もしそうなったら少なからずショックだから、いまいち一歩を踏み出せない。  変なやつだと思われたり、嫌われたくないのだ、彼には。  俺ら部下と課長の間には、見えない壁でもあるみたいだ、と改めて思う。  ちなみに部長はほわほわした天然キャラだから、わりと絡みやすい。  足して二で割ったら丁度いいのに。 ──……  そんなある日、かねてより予定されていた会社の飲み会当日。  俺はプライベート優先でいつも参加しなかったけど、課長と少しでも親睦を深めることができれば……と、今回は参加を決めていた。  だが、最初に上司らにお酌してまわって以降、皆それぞれ居心地のいい者同士、仲がいい同僚とのグループが出来上がってしまって、課長の隣はおろか、完全にテーブルが離れてしまった。  しかも課長は他部署の課長や部長がいるテーブルについている。  上司陣の集合した席なんて、俺の同僚や若い子はあまり行きたがらない。  せいぜいフットワークの軽い、普段からふらふらとしている営業部の一部か、ベテランのお局様が数名、役職のついた彼らの隣を陣どっている。 ……うーん。こりゃもう無理だな。  まあ別にいいんだけど、ちょっと残念。 「お前めっちゃ飲むね~。家でもそんなん?」 「……ん? あぁ、お酒は結構好きだよ。トイレ近くなるけど」  いつの間にか隣に来ていた同僚に話しかけられ、朗らかに返す。  彼のグラスに入っているのは、たぶん焼酎の水割りかな。  酔い具合とグラスの形状からして、水ではない、アルコールなのは確かだ。  彼はコップに残った三分の一ほどを、くいっと一気に喉に流しこんで、とろけきった目でカランと氷を鳴らした。 「わははっ、トイレ近くなるのは分かるわ。でもお前、全然顔色変わんねーのな。ウーロン茶飲んでると思った」 「ウーロンハイだよ、これ」 「もしかしてウワバミ? 俺はね、もうわりとヘロヘロでぇ~す」 「ふは、そうだろうと思ってた。大丈夫かよ」  ほんのりと赤い顔をして、体重をかけて凭れかかってくる同僚を笑っていなす。  飲み会はそろそろ終盤に差しかかっている。  俺の周りはもうだいぶ酔いがまわったやつばかりで、男女問わず何故か他のテーブルからも人が集まってきていた。  そういえば昔からこうだ。  俺はあまり飲んでも騒がないし、同期や後輩にアルコールの強要もしないから、いつも終わり間際は酔いつぶれた人たちの安全地帯のようになる。  無駄に酒に強い俺は適当に会話を受け流しつつ、近くにあった水を彼に手渡してから立ち上がる。と、すぐ後ろで家みたいにリラックスして寝転んでいた後輩の女の子に上着をかけてから、踏まないように席を立った。

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