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動揺
なんだか変な言い回しになってしまったかも知れない。
気に触ったら申し訳ないし、彼にとって絡みづらいやつだと認定されるのはイヤだ。
そう思って、せめて言い訳をしようとしたら、先に課長がぽつりと呟く。
「……お前、兄弟とかいるのか……?」
「え……、い、います。弟と妹が」
「……そうか。だから」
「……?」
「だから、面倒見がいいというか、安心するのかも、な」
「……へ?」
アルコールのせいか、課長はいつもよりかなりマイルドな雰囲気になっていて、おまけに頬は上気し、だらしなく緩んだ首許から妙な色気がこれでもかというほど溢れている。
そんな彼が、疲れたように俺の肩に寄りかかってきたかと思えば、こちらを窺うように潤んだ目でチラリと一瞥してきて。
え……なんだこれ。待って。え?
仕草が色目使ってくるときの女子じゃん。誘ってんのか?
「あっ、あの、課長……っ?」
「お前の周りって、いつも人が集まるよなあ、って、前々から思ってたんだ……」
「えっ、はあ、そうですかね」
「あぁ……、会社でもそうだ。いつもやる気ねえツラしてるくせに、仕事は早ぇし、ミスもほぼゼロ。表情豊かってわけじゃねえのに、年上から可愛がられてて、新人からは懐かれてる。人に好かれる素質ってのが、お前にはあるんだろうな」
「……そんな、おそれ多いですよ。やめてください」
課長、やっぱりちゃんと部下のことを見ているんだな、と思う。
でもそんなあけすけに、べらべら褒めるなんて……。
酔っているときの言葉のほうが本音だろうし、部下の自分をおだてる必要性も皆無だから、素直にありがたいお言葉として受けとるが、突拍子もなさすぎて今は嬉しいよりも驚きのほうが強い。
力の抜けた身体をこちらに傾け、真っ赤な顔でほんの少し微笑んでいるように見える課長の表情に釘付けになる。
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