「優しくしたいんだけど、」 葵は壮太の額にキスをして着ていたカッターシャツのボタンを一つずつ外していく。 「壮太、可愛すぎる。無理だ」 ごめんね、と言うと、葵は噛みつくようなキスを壮太に与えた。 驚いた拍子に開けた口の中にするり、と舌が侵入してきた。 絡めとられ、吸い付かれる。 かと思えば、優しく歯茎をなぞられ、瞬間、快感が壮太を襲う。 優しく、だけど強引なキスに蕩けてしまいそうな感覚に陥ってしまう。 ズボンのベルトが外されたけど、そんなこともはやどうでもいい。 このまま葵の手に堕ちてしまえばどれほど楽になるだろう。 むしろ、堕としてほしいと願ってしまうくらいに時間が経てば経つほど壮太の思考は冷静でなくなっていく。 「壮太、どうしてほしいか言ってごらん」 下着越しに壮太の尻を撫でながら、決して前には触ってくれない。 あくまでも、選択するのは壮太であると葵は言いたいようだ。 「……」 嗚呼、これではまた昨日のような失態を晒すことになってしまう。 もしかしたら今後も会うかもしれない人間に全てを曝け出していいものかどうか。 否、それはもう、今更かもしれない。 昨日、十分なくらいに己の性を曝け出してしまったではないか。 「葵さんのが、ほしい」 「どこに欲しいの？」 「……だから、」 もう、悩んでいる場合ではない。 一刻も早く葵を受け入れ、熱を感じたい。その一心だった。 壮太は葵から離れると、ズボンと下着を脱いで葵に尻を向け、ベッドの上に四つん這いになった。 自ら尻孔を指で広げ、そこを葵に見せつける。 こういうことを望んでいるに違いない。 恥ずかしいし、普段ならこんなこと絶対にしないのだけれど、壮太の体はもう限界なのだ。 とにかく、すぐにでも葵の熱を感じたい。 「ここに、葵さんのを、入れて」 「入れて？」 尻孔にキスをされ、びくん、と体が跳ねた。 人差し指が挿入され、中を乱暴に搔き乱す。 が、わざとらしくいい所を外し、その行為はただ慣らすだけを目的としたものだった。 じれったくて自然と腰が動いてしまう。 そこじゃない、もっとこっち、と葵を誘導しようにも、葵はわざとそれを外す。 「入れてください……ぐちゃぐちゃに、してください、熱いの、ください……！」 「いいよ、壮太。君は本当に最高だ」 指を二本、三本と増やされて、段々と興奮が増してくる。 欲しい、というただ一心で腰を突き上げ、揺らし、葵に強請る。 まるで獣だな、と自分でも笑ってしまいそうになるし、こんな失態見せたあとで後から素面で会う羽目になるなんて信じたくもない。 本来なら御免被りたいところだが、どうせ会うのは二週に一度の通院時だけなので、もういいかな、とも思っている。 「壮太、気ィ失わないでね」 「ふあっ、あああ！」 尻孔に葵の男根が挿入された。 今までのゆるい性行為からは考えられないくらい性急で、ピストン運動も激しくて、あまりの快感に目の前がチカチカする。 「あ、そこ、あああ！イイ、です、あんっ！」 「いいよ、壮太、もっと声出しな」 ギシ、ギシ、とベッドが軋む。 だらだらと口元からは涎が垂れて、でもそれを気にする余裕もないくらい気持ち良くて。 「あ、イク、んああっ―――！」 刹那、己の欲が盛大に吐き出され、シーツを汚した。 はあ、と呼吸を整えようとしたのも束の間で、すぐにピストン運動は再開される。 達したばかりの体にはあまりにも刺激が強すぎる。 「葵さ、無理、無理ぃ！」 「無理じゃないよ、もっとイけるでしょ、ほら！」 「んっ、ああ、あ、あんっ！」 何が何だか分からない。 中イキしてしまったようで、全身がびくびくしている。 快感のピークがずっと継続している感じ。そ れでも尚動きを止めないものだから、頭の中が真っ白だ。 「壮太、こっち見て」 くるん、と挿入したまま仰向きにされた。 涙と汗と涎でぐしょぐしょで、そんな顔、葵には見られたくなくて思わず両手で顔を覆った。 あまりにも情けない顔をしている気がして、見られたくなかった。 「見せて、全部。壮太の全部を見たいな」 優しく言われ、そっと手を払いのけられる。 ああ、この人には本当に敵わない。 今までここまで敵わないと感じた人は、過去に付き合った一人だけ。 否、それ以上かもしれない。 「葵、さん」 涙しながら、壮太は葵に手を伸ばす。 「もっとほしい。葵さんの全部、ちょうだい？」 「ふふ、誘ったのは壮太だからね」 ちゅ、と壮太にキスをして、葵は再び腰を動かした。 壮太の喘ぎ声とベッドの軋む音だけが部屋にこだました。