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第10話
ああ、腰が痛い。二日連続でハッスルしすぎたせいで、そろそろ壮太の腰は本気で砕けるかもしれない。
「お茶どうぞ」
「ありがとうございます」
時刻は明け方の四時に近い。
数時間後には大学に行かねばならないのでそろそろ仮眠でもとったほうがいい気がするが、目が冴えて眠れそうにない。
体はとんでもなくだるいけれど。
リビングのソファに座り、お茶を飲みながら葵を見る。
セックスしているときのギラギラした目付きもうっとりするくらい大好きだけど、こうして普通にしているときの葵も格好いい。
イケメンは何をしても様になる、というけれど、それは本当らしい。
壮太は着衣しているが、葵はまだ暑いらしく、上半身がはだけたままだ。目のやり場に困ってしまう。
「大学生、だったよね。今日は朝から?」
「はい。さすがにもう帰ります」
「ここで寝ていいよ、起こしてあげる」
「う……」
起きれそうにないのを見透かされている。有り難い申し出だったが、場所も良く分からないので一度家には帰りたい。
自宅から遠いところだと大学へ行くのに困ってしまう。
「大丈夫です、帰れますんで」
「近くまで送るよ」
ちゃちゃっと前をしめると葵はにっこり微笑んだ。
最後までイケメンだったなぁ、と思いながらリビングを出て廊下を歩き、靴を履く。
「あ、壮太」
「はい?」
振り返ると、ちゅ、とキスをされた。
不意打ちだったのでその場で硬直してしまった。こんなの、まるで恋人同士ではないか。
「またいつでも連絡してね、助けになるから」
「……はい」
いや、そこは「はい」じゃないだろ、と答えた後で思ったが、葵の善意溢れるオーラを前に否定することなんてできなかった。
それに、助けになる、と言っているので、薬の相談とか、そういうことを言っているに違いない。
やましいことを考えているのは多分、壮太だけだ。夢のような時間もこれで終わってしまう。
寂しいけれど、いつまでも現実から逃げるわけにはいかない。意を決して、壮太はドアを開けた。
「!?」
固まってしまった。
なんだか見覚えのある景色だ。
扉前の共有通路も自分の住んでいるアパートそっくりで、いや、むしろそのもので。
そういえば、部屋のつくりも同じような感じだった。壁の色も、思い返せば一緒だ。
「え……、うそでしょ」
恐る恐る共有通路に出て隣の部屋の玄関を見る。
格子には見覚えのある傘がぶら下がっている。
ドキドキしながら鍵を取り出し、恐る恐る差し込んでみる。当然、開いた。
「…………え?」
横を見ると、苦笑する葵の姿。
まさか、そんなことがあり得るのだろうか。確かに先日まで隣の部屋は空き部屋だった。
「うん、隣同士みたいでね、オレたち」
「嘘でしょ?!」
昨日、一夜限りと決めた相手は行きつけの薬局のお兄さん。
そして更に、同じアパートの住人で、隣に住むお兄さん。
そんなこと有り得るか? と自身に問うが、実際起こっているのだから仕方ない。
「まあ、よろしくね」
「――――ッ!!!」
もうそんなに会うこともないだろう、と思っていたが、そうもいかないかも、しれない。
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