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第21話
不要な教科書等を片付けていると玄関チャイムが鳴った。
葵だろう、そう思い、壮太は玄関まで走って扉を開けた。
スーツ姿の葵が立っていた。
一度家に帰ったのだろう、手には通勤カバンを持っておらず、スマホを片手に握っているだけだ。
「こんばんは、壮太」
「こんばんは。すみません、仕事終わりに」
「ううん、気にしないで。壮太の力になりたいからね」
ああ、笑顔が眩しい。その笑顔を向けるだけで2,3人はキュン死にするのではなかろうか。
少なくとも壮太は今、キュン死にしかけているのを必死に堪えているところだ。
リビングルームに案内した。一人暮らしするには広すぎる2LDK。
一部屋は完全に物置部屋になっている。
今はどちらかというと寝室で暮らしているのでリビングには必要最低限のものしか置いていない。カウンターキッチン、テーブル、テレビ、本棚を少し置いている。
寝室には勉強用に小さな折り畳み机を置いているのでそこでいつもは勉強している。
「参考書とか持ってくるんで、座っててください」
「寝室で勉強してるなら寝室に行こうか?」
「いやっ、」
寝室はとんでもなく散らかっていて、とてもではないが人様を入れれるような状態ではない。
まあ、一度葵にはそんな部屋を見られてはいるのだけれど。
それに、葵と寝室をセットにするとどうしても性的なことを考えてしまいそうでよろしくない。
今日はそんなつもりで呼んだのではない。
もちろん、勉強の面で助けてほしいのも勿論なのだが、それよりももっと重要なことで呼んだのだ。自分の気持ちに決着をつけるために。
「ここで!とにかく、待っててください!」
壮太はそう言うとリビングを出て寝室に駆け込んだ。
愛用している参考書と筆記用具を引っ掴み、はっとする。
仕事帰りに寄ってくれた葵はお腹がすいているのではないだろうか。
そういえば自分もきちんとした晩御飯を食べていない。
自分のことばかりですっかりそのことが抜け落ちてしまっていた。
壮太は慌ててリビングに戻った。参考書と筆記用具をテーブルに置き、すみません、と葵に声をかける。
「葵さん、お腹すいてません?」
「ああ、すいてるかも」
やはりそうだった。
部屋に招待したものの、今すぐに振る舞える料理を用意しているわけでもない。
壮太は慌ててキッチンを漁り始めた。
この前特売だったレトルトの中辛カレーくらいしか常備品がない。
「何?壮太作ってくれるの?」
「えっ」
壮太は冷蔵庫の中身を確認した。
玉ねぎと人参はある。卵、ウインナーもある。
幸いにも米は間違えて炊いてしまった分が炊飯器に丸々二合分残っている。
「オムライスくらいしか作れないですね……」
「いいよ、食べる」
葵の眩しいスマイルに負け、壮太はエプロンを装着した。
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