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第22話

エプロンは一般的なシンプルエプロンだ。 あまり料理は得意ではないがオムライスならなんとか作れる。 みじん切りにはフードチョッパーを使い時間短縮を図る。 フライパンで材料を炒めながら、ちらり、とリビングの様子を伺う。 葵は真剣に壮太の参考書を見ている所だった。 まさか葵に手料理を振る舞う日が来るなんて思いもしなかった。 美味しくなかったらどうしよう。 味が薄すぎたらどうしよう。 そんなことばかり考えてしまい、不安になる。 最後にふわふわ卵を作り、皿に成型したケチャップライスの上にかけ、オムライスの完成だ。 食卓にオムライスとオニオンスープ、カットサラダを取り分けただけのサラダを置いて、葵の様子を伺いながら向かい側に座った。 「いただきまーす」 「どうぞ」 ああ、緊張する。 不味いと言われたら立ち直れない気がする。 葵の言葉を聞くまで緊張しすぎてご飯が喉を通らない。 葵がオムライスを口に運び、もぐもぐと動かし、飲み込んだ。 この数秒が心臓に悪い。どうだっただろう。食べれる味だっただろうか? 壮太はスプーンを握ったまま葵をじっと見つめた。 「うん、美味しい!」 「ほんとですか!」 緊張が一機に解れ、肩の力が抜けた。 有り合わせの料理だったけれど喜んでもらえたので嬉しいしほっとした。 (なんか、新婚みたい……) そんなことをふと思ってしまった。 葵と一緒にいれたらずっとこんな幸せな時間が続くのだろうか。 だとしたら、なんだかいいなあ、と思ってしまう。 その幸せを是非手にしたいものだ。 だけど。 (オレなんかが……) こんな重い人間を恋人にしてくれる男がどこにいるだろう。 否、例え付き合ったとして、また重すぎると言われたら、もう二度と立ち直れないかもしれない。 もう二度と、怖くて恋ができないかもしれない。 そんなことを考え始めると決意がどんどん揺らいでいく。 ここに呼んだのは想いを伝えるためなのに、どんどん気持ちが臆病になっていく。 その一言を言葉にするのがどうしようもなく怖い。 ご飯を食べ進めながらたわいのない会話をするが、その間も壮太の思考はマイナスなことばかりだった。 「ご馳走様。ありがとう、壮太」 「いえ、とんでもないです」 壮太は食べ終わった自分の皿と合わせて食器を流しへ持って行った。 食器を一通り洗った後、そのままリビングへ戻る。 葵は壮太を見て、いつもの笑顔を向けてくれた。

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