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第23話

「で、話って?」 葵から話を切り出され、思わずどきりとした。 想いを伝えるためにここへ呼んだが、決意がまだ揺らいだままだ。 「えっと、」 好きです、と伝えるだけなのだが、断られたらどうしよう、という気持ちが強すぎて、口の中が急に渇いてきた。 「……模試の点数が、伸びなくて」 結局勇気が出ず、勉強の話題に逃げてしまった。 我ながら臆病だとは思う。 が、勉強の方も助けてもらいたい、というのは本音なので話題を取り消すことはしないでおいた。 「そっか。問題集、どうやって解いてる?」 「えっと、」 壮太は椅子に座り、問題集を開いた。 自分の勉強の仕方を葵に伝えると、葵は少し考えて苦笑した。 やはり勉強の仕方に問題があるらしい。 「まずね、選択問題でも、答えを覚えて解答するんじゃ意味ないからね」 言われてみれば確かにそうだ。問題集は繰り返し行うので答えは大体覚えてしまっている。 「一つずつ選択肢を見て、どこが違うのかを答えられるようになるまで理解しないと意味がない」 「……なるほど」 「それから、」 葵のアドバイスはどれもためになるものばかりだった。 葵に教えてもらいながら、その場で問題を解き、分からないところは考え、それでも分からない場合は葵に尋ねる。その繰り返し。 普段よりページが進む速度は遅かったが、理解度は高まり、質の高い勉強時間を確保できたように感じる。 葵に言われたことを参考書に書き込みながら、一つ一つ、丁寧に問題と向き合っていく。 このやり方は一人では決してできなかっただろう。気付けば勉強を始めて一時間が経過していた。 色々なことを一気に学習したせいか、脳が糖分を欲している気がする。 普段とは比べ物にならないくらい脳が疲れている。 「ちょっと、チョコレート取ってきます」 駄目だ、糖分がほしい。 席を立ち、足早に冷蔵庫で向かうと個包装のチョコレートを適当に鷲掴み、席に戻った。 チョコレートをテーブルの中央に乱雑に置く。 「葵さんも、よければどうぞ」 「ふふ、ありがとう。疲れたの?」 「脳が酸欠みたいになっちゃって」 チョコレートを一口口の中へ放り込んだ。 チョコレートの甘味が口の中一杯に広がった。 糖分が脳に行き渡るような気がして、疲れが和らいだ。 「美味しい?」 「はい」 「味見していい?」 「はい?」 葵は立ち上がり、壮太の近くへ来た。 意味が分からなくて葵を見上げると、そっとキスをされた。 容易に舌を絡めとられ、口の中のチョコレートを舐めとられていくような、そんなキス。 それでも、壮太のいいところを刺激され、思わず声が漏れ出てしまう。 突然の葵のキスに戸惑いつつも、だんだんとその刺激が心地よくなり、蕩けてしまいそうになる自分がいて。 「……ん、ふぅ、ぅ……」 葵のワイシャツをぎゅ、と掴み、もっと欲しい、といつの間にか強請っていた。 それに答えるように葵は甘い甘いキスを壮太に与えてくれる。 生々しい水音が静寂した部屋に響き渡る。 だんだんと頭がぼーっとしてきて、考えるのが億劫になってきた。 「うん、ミルクチョコレートだね」 唇を離し、ぺろり、と葵は唇を舐めて、御馳走さま、と微笑んだ。 ああ、この人は本当に反則だ。 壮太が拒否しないのを分かっていて、前触れもなく、許可も取らずに突然こんなことを行って。 かと思えば、そういう場面になったら自分からは何もせず、壮太の要望を聞きだすまで動かない。 反則だ。ずるい。 だけど、そんな葵が好きなのだ。

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