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第32話

理人が来ると聞いていたので葵が登場した時はどうしようかと思った。 正直、葵にどう甘えていいかわからないし、どこまで心を許していいかもわからない。 変に甘えて、重い、無理、と切り捨てられたらどうしよう、とそればかりが脳裏を過ぎり、頼るにも頼れなくて、結果、理人を呼んだのだ。 だから、葵がいると聞いて正直怖かった。 理人を責めたくなった。 でも、こんな姿を見ても葵は少しもひかなかった。 むしろ受け入れてくれて、大した問題じゃない、とまで言ってくれた。 結果的にこうして葵に抱きしめてもらい、心の隙間を埋めてもらい、心が落ち着いてきている。葵を連れてきてくれて、本当によかった。 「はー、落ち着いたみたいでよかった。葵さんのおかげです、ありがとうございます」 理人がほっと安心したような声色で葵に声をかけた。葵はふふ、と笑っている。 「壮太、理人くん呼んで、エッチなことお願いしようとしてたでしょう?」 「……ノーコメントで」 「オレがいないときは駄目だよって言ったでしょ?」 「いても駄目ですからね?!」 理人は葵の言葉に突っ込みを入れた。 だが、葵の言葉は図星で、葵があそこで登場しなければ、めちゃくちゃに扱ってほしい、と理人にまた無理を言っていた。 葵にダメだと釘をさされていたのに、だ。 「葵さん、ごめんなさい」 「うん」 葵はにこ、と笑って壮太の頭を撫でた。 壮太もだいぶ冷静さを取り戻し、普段の自分に戻りつつあった。 「今度から、葵さんがいるときにします」 「違うから!葵さんいても駄目だから!」 そろそろ突っ込みつかれてきた理人である。 この二人の中で一体理人はどんな立ち位置なのだろう。 気になるけれど、聞いても後悔しかしそうにないから触れない方が賢明だろう、理人はそう判断した。 「葵さん」 壮太は葵に抱きついたまま、葵を見上げた。 「今日はめちゃくちゃにされたい気分なんですけど、だめですか?」 「そんなこと言って誘って、どうなっても知らないよ?」 ちゅ、と額にキスをして、ひょい、と壮太を抱き上げて。 そのままベッドに寝かせたので、まずいな、と思ったのは理人である。 「オレ帰りますんで。じゃあな壮太、達者でな!」 「え、理人、待ってよ!」 「待たない!」 「理人くんも混ざりなよ」 だからなんでそうなるんだ、と理人はもう訳が分からない。 好きなもの同士で愛し合うのが普通だろう、そこに第三者である理人が介入するなんて、邪魔でしかないだろうに。 「三人でするの、気持ち良かったでしょ?ね、壮太」 「はい」 「……」 しばらく理人はこの二人に振り回されることになるのだろう、今この瞬間、それを悟った。 困り果てた理人を見て、壮太は今日初めての笑みを浮かべた。

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