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山下友治 4

葵は宣言通り、普段の倍速で動き、次々と仕事をこなしていった。 そして見事宣言通り閉局時間丁度にシャッターをおろすことに成功してしまった。 「今日の原さん、気合入ってますね」 「やる気じゃん、原。明日もよろしく!」 とか、周囲は言っている。葵は愛想よく笑って過ごしながらもさっさと片付けを済ませ、定時に退勤した。 やることもないので友治も葵と共に職場を出た。 愛の力はすごいと思う。 「で?愛しの中川くんはどこにいるんだ?」 「えっとー、」 葵がラインを確認していると、遠くの方からパタパタと走る音が聞こえてきた。 「葵さん、お待たせしました!」 壮太が走ってやってきた。 隣にいるのは友人だろうか。 てっきり壮太だけだと思っていたので友治は驚いた。 「理人に勉強教えてもらってたんです」 「そか。じゃあ、帰ったら成果見ようかな」 「はい!」 壮太は薬局に来るときと比べ物にならないくらいに明るかった。 こんな明朗な壮太、初めて見る。 あまりの別人っぷりに友治は唖然とし言葉を失っていた。 恋をするとここまで変わるのだろうか。 それとも、普段はこんな感じなのだろうか。 「こっちは同僚の山下友治。友治、そっちの子は壮太の親友の理人くん」 紹介されると、理人はぺこり、と礼儀よくお辞儀をした。 「今からご飯行くけど、友治も来る?」 「え?行っていいの?」 突然のご飯の誘いに友治は驚いた。 仲の良い三人の中に入っていいのかどうか、判断ができなかったからだ。 迷っていると理人がにこっと微笑んだ。 「勿論いいですよ、大勢の方が楽しいですし、壮太も気分転換になると思うんで」 ね、と理人が笑顔を見せた。 その笑顔に一瞬、どきん、としてしまったのは気のせいだろうか。 壮太は童顔で可愛い系の、葵好みの顔であるが、隣に立つ理人もまた、ジャニーズ系というか、爽やか好青年というか、モテるんだろうなあ、という容姿をしている。 まさかな、とは思うのだけれど、気になるのは確かで。 面食いなのは元々ではあるのだが、多分、容姿に惹きつけられているのだろう。 「じゃあ、お邪魔しようかな」 理人のことも気になるので誘いに乗ることにした。 壮太はお酒が飲みたいらしいので近くの居酒屋に入った。 座席に座るのだが、必然的に壮太、葵が横並び、友治、理人が横並びで向かい合う形になった。 決して狙っていたつもりではないのだが、これは理人のことをよく知る好機である。 「ご注文お決まりですか?」 店員がやって来たので皆は急いでメニューに目を通す。 日本酒からカクテルまでメニューは幅広い。 「オレたちカルーアね」 「甘いの好きだなぁ、お前」 葵はいつも甘めのカクテルを頼む。 ビールや日本酒は飲めないわけではないがどうも苦手らしい。 女子的にはそれが可愛いらしいが友治にはよく分からない。 「んー、梅酒ロック」 「あ、じゃあ、オレもそれで」 理人は好みの酒がないのだろうか、面倒くさかっただけなのか、友治と同じものを注文した。

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