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立花理人 6

「理人って、二重人格?」 「は?」 突拍子もないことを言われ、理人は阿呆な声を出してしまった。 壮太から借りたシャツとパンツを着てイスに座り、棒アイスを食べている所だった。 「普段優しいのに、セックスのときはあんなにクールになるし。でも、風呂場ではすごく優しかった」 「いや、それは……」 決して理人の願望なんかではなく、それはお前が望んだから、とも言えなくて。 そうなのかなあ、と適当に返事を返しておいた。 アイスを食べながらちらり、と向かいのイスに座る壮太を見る。 壮太はお茶を飲みながら笑んでにこにことこちらを見ていた。 きゅん、とときめいてしまった。 この壮太の笑顔が歪むのを見たくないし耐えられない。 ずっと笑顔にしてやりたい。 どうすればそれが叶うだろう。友達ポジションで、それは果たして叶うのだろうか。 「壮太、オレにしとけよ」 「え?」 壮太はきょとんとして声を上げた。 意味が分かっていないのだろう。 「むしゃくしゃしてても、エッチな気分になったときも、見ず知らずの男についていくなって言ってんの。」 理人の知らないところで知らない誰かと壮太が交わるなんて想像もしたくない。 「それならオレが相手するから、いつでも呼んで。駆けつけるから」 そう言ったのは、壮太のことが心配な気持ちと、あんな艶めかしい壮太を他の誰かに見られたくない気持ちが半々だった。 これは本当に友達としての気持ちなのだろうか。 未だ分からぬ己の感情に理人は心の中で悩まされた。 「ああ、勿論恋人ができたら話は別な」 「はは、そうだね」 壮太は笑って頷いた。 「ありがとう。すごく心配かけさせちゃって。無茶なお願いしたのに、全部聞いてくれて。感謝してる」 「痒っ!いいんだよ、オレたち友達だろ、気にすんな。友達ていうか、もう親友?」 「親友、か」 壮太は嬉しそうに笑みを浮かべた。 これできっと、何か気持ちが揺らいでもまずは理人に連絡が来るだろう。 理人にしてみれば一安心だ。 「それはそうと、オレは試験勉強しに来たんだけど」 「あ、」 一週間前に約束して、理人は勉強するつもりで壮太の部屋を訪れたのだ。 壮太は苦笑して、ごめん、と謝った。 結果的に衰弱した壮太を見つけたので良かったので、今日はもう勉強はいいかな、という気持ちだった。 「あのさ、分からないところあるんだけど、いい?」 「お、おう、今からやるか?」 「なんなら泊まっていきなよ」 この流れで宿泊だなんて、またエッチなことをしでかしそうで恐ろしい。 理人が悩んでいると、それに気付いたようで、壮太は笑った。 「エッチなことしたいなら、夜ね」 「こ、心の内を読むなー!」 壮太は大切な親友だ。 だけど同時に、手放したくない気持ちがあって。 誰にも触れてほしくないと思う自分もいて。 一体この感情は何なのだろう。 壮太のことが、友達以上に好きということなのだろうか。 でも、なんだか違う気もしてはっきりとした答えを出せなくて。 自分の中に宿った小さな違和感を覚え、だけどその正体が分からなくて。 でも、今はそれでもいいかな、と理人は思った。 親友という関係で、今は満足だった。

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