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原葵 3

葵と友治は服を着て、リビングで二人を待っていた。 浴室で二人で仲良く後処理をし合っているのだろうな、と想像するとそれだけでムラムラしてしまう。 本当なら葵がしてあげたいところなのだが、今日は理人のガードが強いので無理だろう。 大人しく二人が出てくるのを待つしかない。 「なんか、……やばいよな、この間」 友治が浴室の方を眺めながらそんなことを言った。 「やばいって?」 「ずっとシャワー出してるから聞こえないけど、二人で掻き出し合ってんのかなって思うとさ。なんかさ。な? ……お前も男ならわかるだろ、オレのこの気持ち!」 どうやら友治も同じことを考えていたらしい。 な? と期待を込めて言われてしまい、同感するか少し悩んだ。 「友治が変態だってことはよくわかったよ」 「変態紳士なお前にそんなこと言われたくない」 「誉め言葉?」 にこり、と満面の笑みを浮かべてやると、友治は大きなため息をついた。 自分が変態だという自覚は十分にあるのでそこを否定するつもりはない。 ただなんとなく、友治と同じタイミングで同じことを考えているのがなんとなく嫌だっただけだ。 「この後どうする?理人くん、帰すの?」 「いや、」 葵はキッチンに行き、コップにお茶を注いで戻ってきた。 友治に渡すと、それを一気に飲み干した。喉が渇いていたらしい。 「話したいこともあるし、今夜は帰さない」 「うわあ、悪い大人だね」 「お前にだけは言われたくないな、そのセリフ」 空のコップを受け取ると葵はキッチンに再び足を運び、流しにそれを置いた。 「ハッテン場でひっかけてきたお前の方が悪い大人だろ」 「同意の上だから悪くはないでしょ」 それに、と葵は自分もお茶を飲みながら付け加えた。 「オレが声かけてなかったら、もっと悪い奴に引っかかってたかもしれない」 「ん……まあ、そうだな」 友治は葵を見ると、ふっと笑みを漏らした。 その笑みの理由が分からなくて、葵は首を傾げた。 「いや、お前が本気の恋をする日がくるなんてな。お前と寝た日が遠い昔のようだよ」 「え? したいの?」 葵はソファに座る友治に近付いて、にやり、と口角をあげた。 「流れでキスでもしとく?」 「……ッ!」 冗談で言ったつもりだったのだが、友治は顔を真っ赤にさせて身を引いた。 こういう反応をされるとつい虐めたくなってしまう。葵の悪い癖だ。 「ほら、目閉じて?」 「やめろよ、オレ未だ傷心中なんだから」 はぁ、と友治はため息をついた。 言っている意味が分からなくて、葵は隣に腰かけた。 「いつもとノリが違うね」 「……失恋して、ようやく新しい恋愛に踏み出そうってしてるとこなの。この無自覚野郎が」 「え?」 そこまで言われて鈍感な葵ではない。 いつから想われていたのかは皆目見当もつかないが、友治が自分に恋心を抱いていたなんて全く気付かなかった。 「それ、もしかして寝たときは既に?」 「察しろ、頭いいんだから」 「そっか。ごめんね」 「謝るな、余計辛い」 友治とは何度も寝ているので、そうであれば残酷なことをしてしまっていた。 が、同意の上の行為故、どちらが悪いとも言えないことなのでそれ以上は葵も何も言えなかった。 「で? 次の相手候補は理人くん?結構歳の差じゃない?友治三十だよね?」 「だから、……それも含めて二人で話がしたいんだよ」 「ふぅん、そっか」 葵への恋心には、一旦蹴りはつけているらしい。 前を向いてくれているのなら、それが救いだろう。 「よかった」 「まあな」 友治の表情は明るかった。これ以上の介入やちょっかいはよくないだろう。

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