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中川壮太 1
『理人くんとするときはゴムつけてもらってね』
突然、葵からそんなメッセージが送られてきた。
たまたま理人も壮太のスマホ画面を見ていたため、二人して固まってしまった。
「そういうイメージなのかな、オレと理人が二人になるのって」
「いやあ……でも前科がありすぎるし、なあ?」
二人は顔を見合わせると苦笑しあった。
今日は生憎、二人とも腰が痛くてそれどころではないのだ。
二人は寝室のベッドに腰かけていた。
床に座ると腰が痛いため、じゃあベッドに行こう、という流れになったためだ。
「そういえば、理人、昨日山下さんとはその後何したんだ?」
「え?それ聞く?」
理人は再び苦笑を浮かべる。
壮太は興味津々で、強く頷いて肯定してみせた。
昨日、理人と友治は初めて会ったにも関わらず雰囲気がよかったので、もしかしたらそういう進展をしたかもしれない、とそわそわしていたのだ。
理人はうーん、と少し考えた。
「まあ、……続きを少々」
「少々?」
「ごめん、嘘ついた。明け方までやってた」
「元気だなー」
葵と出会ったばかりの頃は明け方近くまで関係を持ち、その後、葵は元気に出社していた。
それを思い出し類は友を呼ぶのかな、なんて思ったりした。
「で?好きになった?」
壮太は理人にずばり尋ねた。
あまりにも直球な問いかけに理人は反応に困った様子だった。
自分の恋沙汰より他人の恋沙汰を聞く方が楽しい。
そう思えるまでに今はメンタルが回復している。
葵といると比較的落ち着いていられるし、メンタルが崩れるようなことはほとんどない。
今はどんな薬よりも葵が必要なのだ。
「……まあ、いい人だなって」
「うんうん」
理人は困った顔で壮太を見てきた。
困らせるようなことを聞いているつもりはないのだが、現に理人は困っている。
どうしようかと悩んでいると、理人に両肩を掴まれた。
「壮太、何も言わずに抱きしめられてくれないか?」
「えっ? いいけど」
そう言うのと同時に、理人にぎゅ、と抱きしめられた。
いきなりどうしたというのだろうか。
訳がわからないでいると、オレさ、と理人が口を開いた。
「昨日友治さんと話して、気持ちにはケリをつけよう、って。先に進むのはそれからだって」
「……うん?」
理人は痛いくらいに抱きしめてくる。
理人?と名前を呼ぶと、うん、と小さく頷いた。
「壮太、オレ、お前のこと好きだった」
「えっ」
理人が自分を好きだった?
一体いつからだろう、そんな素振り、全く見せないから気付かなかった。
「理人、オレ、知らなくて、」
「気にするな。これはオレの気持ちの問題だから。本当は言うつもりもなかったんだ。ごめんな、なんか」
だからな、と理人は続けた。
「もうキスもしないし、セックスもしない」
「えっ」
否、驚く方が間違っているのは壮太も分かっている。
壮太は葵と付き合っているのだから他人と体を交えることすらおかしい話だ。
分かってはいるのだけれど、なんだろう、改めて言われると、急に言い知れぬ不安感が襲ってくる。
もし鬱になって、その時葵がいなかったら?
滅茶苦茶にされたいという願望を叶えてくれる人がその時いなかったら?
そんな不安が脳内を駆け巡り、どうにも説明し難い感情に襲われてしまった。
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