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山下友治 12

「大丈夫です、まだ寝てました」 寝室の様子を見て戻ってきた壮太は急ぎ足で駆け寄った。 ソファに座って過去話を暴露させられている友治と、対面で後ろから抱っこされながら理人の膝の上に座って目を輝かせる壮太と、同じくにやにやしながら話を聞く理人。 これ、何の罰ゲームだろう。 壮太はとりあえず、パンツくらいははいてほしい。ワイシャツで隠してはいるけれど、先程から目のやり場に困っている。 「今の話を聞く限りだと、葵さんは完全に、ビッチな誘い受けって感じですね」 理人は一体どこからそんな言葉を覚えてくるのだろう。そういう世界を知らない、もっと真面目な感じの子だったイメージなのだが。 「葵さんって、受けとかできるのかな……」 自分の彼氏の心配をするのは結構なんだが、そこじゃないだろ、と思ってしまった。 そうだなぁ、と理人は少し考えた様子で口を開いた。 「ああいうタイプが受けに回るときって、こう、弱み握られて複数に無理やりヤられて、また遊ぼうな、とか捨て台詞吐かれてバッドエンド、的なさ」 「え、何それ、いい」 いや、何も良くないし、それは一体どこのエロマンガの話をしているんだ? ごほん、と咳払いをして、あのなあ、とため息をついた。 「あいつのどこに弱みがある?複数にヤられる?むしろ複数をヤる側だろ、そういう人間だろ、あいつは」 友治の発言に対し、二人は顔を見合わせて、確かに、と納得してしまった。 葵の評価がどんどん落ちている気がするが、自分の蒔いた種だと思ってもらおう。 知ったことではない。 「でも、よく初めてで挿入までいけましたね。どうやって慣らしたんですか?葵さん、攻め側だから、普段はそっち、使ってないんじゃないですか?」 そう、それだ。 壮太の指摘は的確だ。 本当は、その時点で気付くべきだったのだ。 当時、男同士のプレイに関する知識がなさすぎて、葵が教えてくれることが全て正しいと思い込んでいた。 違和感に気付くべきだったのだ。 先程まで情事をしていた人間であったことを。 「今思えば、本当に、手のひらの上で踊らされてたというか」 友治には到底、手に負えない人物であることを、過去に戻れるなら全力で忠告しに行きたい。 当時は無知で、それ故、疑問すら抱くことができなかった。 無知というものは時として恐ろしいということを身をもって経験した気がした。 「ローション、持ってなくて」 一体何が起きているのだろう。 ローションを持っているかと聞かれて、さすがに常備なんてしていなくて。 そしたら、少し使わせてもらうね、と言って、友治の男根を刺激し始めた。 つまり、フェラをし始めた。 使うって、ナニを使うつもりなんだ?と頭の中でハテナが飛び交っていて。 だけど、すぐにそれはどこかへ吹き飛んでいってしまって。 (やばい、嘘だろ……?) そのフェラが、今まで感じたことのない極上のものだったのだ。 相手は男だ。男にこんなことをされて、普段の友治であれば、絶対にこんなに感じることはないはずなのに。 (もう、出そう、やばい) あまりにも、早すぎる。 こんな早すぎるフィニッシュをかましてしまうなんて、威厳も何もあったものではない。 が、耐えられるものでもなかった。 「ごめん、原、もう」 葵の後頭部を押し付けて、無理矢理に喉奥まで咥え込ませた。 我ながら最悪だとは思っているが、欲望には勝てなかった。 達すると、葵はゆっくりと離れ、自身の左手に口の中に出されたそれを塗りたくるように垂らした。 「葵。でしょ?」 「―――ッ!」 こちらを射止めるような、鋭く、妖美な瞳だった。 達したばかりだというのに自身が再び硬度を増しているように感じた。 「まあ、待って?こっち使うの久しぶりだから」 葵は壁に背を預け、股を広げた。 少し腰を浮かしたような体勢になり、精液で汚れた左手を使い、自身の後孔を少しずつ広げていった。 それをローションの代わりにするためのフェラだったらしく、ぽかん、としてしまった。 そんな友治に敢えて見せつけるようにしながら葵は準備を進めていく。 時折色めかしい声を漏らしながら、少しずつ中へ入れる指の数を増やしていった。 その姿が綺麗で、そして、エロティックで、目を背けることができなかった。 「広げてるだけ?」 尋ねると、ピタリと葵の動きが止まった。 変なことを聞いてしまっただろうか?なんだか葵が、あまり気持ち良さそうに見えなかっただけなのだが。 「……先輩が気持ち良ければ、いいかなって」 「どうして?一緒に感じた方が良くないか?」 葵は少し無言になって、何かを考え始めたようで。 難しい顔した後に小さくため息をついて不満げに友治を見た。 「オレが合図するまで、目を閉じて、耳を塞いでてもらっていいですか?」 意味が分からなかったけど、従わない理由がなかったため、言う通りに両耳を手で覆い、目を閉じた。 耳を塞いだからといって完全に何も聞こえないわけではない。 暫くすると、先程とはまるで別人のような声が聞こえてきて、自分の耳を疑った。 先程までの、どこか冷めたような声ではなくて、ただただ、快楽に身を委ねているような、そんな声。 見るな、見るな!と、自制しても、興味の方が強すぎて。 少しだけ、ほんの少し目を開けるだけ。 葵からのお願いを無視する形になるのは申し訳ないとは思ったが、それでも本能には抗えず。 うっすらと目を開いてみると、自身のワイシャツを強く噛み、声を押し殺しながら中を弄る葵の姿が目に映った。 涙で瞳は潤んでいて、押し寄せる快感を全身で受け止めながらも表現すまいと必死に抵抗をしてみせる。 卑猥な水音が部屋に響く。 左手で後ろの孔を弄りながら、右手は自身の男根をしっかりと握りしめ、射精を拒んでいるかのようで。 刹那、体がびくんと震えたかと思うと、右手は男根を握りしめたまま、脱力して咥えていたワイシャツをようやく離した。 射精していない。 ナカイキ、とかいうやつだろうか。 男でもそんなことができるのだと、この時初めて知った。 「合図、まだなんだけど」 こちらを睨みながら葵は言うが、もはや色気しか感じない。 気付けば葵に近付いていて、唇を食んでいた。 葵は抵抗することなく、されるがままだった。 「先輩、いいよ」 そう言うと、葵は友治にコンドームを差し出した。 ごくり、と生唾を飲み込んだ。 もう、我慢の限界だった。

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