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山下友治 13

「違う……オレたちが求めているのは誘い受けビッチな葵さんの話じゃない……そんなのオレたちが知ってる葵さんじゃない……」 「まあ、聞け?」 理人が凄く拒否反応を示しているし、壮太も微妙な表情をしている。 先を促したのは君たちだよ?と言いたい気持ちをぐっと抑えた。 そこから先は、特に説明は不要だと思う。 友治は無我夢中で腰を振っていた。 葵は決して荒げることはなかったが、声が出るのを我慢している姿はかえって興奮した。 事を終えると、なんだか呆然としてしまっていた。 男同士でもこんなに気持ちいいなんて知らなかったし、知らない世界へ一本足を踏み入れたようで、ドキドキもしていた。 「満足?」 葵に問われ、こくん、と頷いた。 よかった、と葵は微笑んだ。 艶めかしい葵の姿から目が離せなくて、男も有りかな、とか思ってしまって。そんな時だった。 「じゃあ、次はオレも楽しませてもらっていい?」 「へ?」 葵はこちらに近付いてきて、キスをしてきた。 が、そのキスが、普通ではなかった。 友治の知っているキスではなかった。 まるで口腔内を侵されているような、濃厚すぎる甘美なキス。 ぞわぞわっとして、気付けば全身から力が抜けていて、友治は仰向けに倒されていた。 一体、何が起きたのか、理解が追いついていなかった。 葵は後ろに纏めていた髪ゴムを解くと、右手首に通し、友治を見下ろして、にやり、とほくそ笑んだ。 「オレ、こっちの方が得意なんだよね」 「こっち、……とは?」 わかっていても、分かりたくなかった。 先程まで甘く蕩けた顔を見せていた後輩はどこへ消えてしまったのだろうか。 その眼光は、獲物を決して逃さない、狼のような鋭いものだった。 「できないことはないんだけど、もどかしいじゃん?」 友治の服の中に手を入れ、優しく弄ってきた。 「オレより上手いヤツなんて、いないんだし」 自信たっぷりに言い切って、葵はぺろり、と舌舐めずりをした。 あ、これは、食われる。 一瞬にして、理解した。 「一応ね。初めてのヤツにはサービスしてるんだ。右も左もわからないまま、ネコ専に開発されちゃうのは可哀想かなって思って。タチの良さも経験してもらっときたいし」 葵はそう言うと、もう一度蕩けるようなキスをして、友治の戦意を完全に奪っていった。 やばいやつに捕まってしまったな、と今更思っても後の祭りで。 初めてということもあり、ゆっくりと丁寧に、否、丁寧すぎるくらいに時間をかけられ、前戯だけで頭がおかしくなるんじゃないかと思うくらいの快感に体が痺れて。 「は、原……もう、やめ」 「あ、お、い」 口に咥えたコンドームの袋を破り、嗜めるように葵はゆっくりと自身の名前を口にした。 「名前呼んで?じゃないと解放してあげない」 「あ……葵、頼むから、」 自分の体なのに、自分の体ではないかのように、疼いて仕方がない。 どこが、というわけではなく、強いて言うなら、全身が、である。 もう何度イかされたのか覚えていない。 我ながら情けなくて、でも、葵の手技には抗えなくて。 友治はこんなにも射精を繰り返しているというのに葵はまだ、一度たりともその雄を放っていない。 友治に挿入されていた時、結局葵は達することはなかったからだ。 「何?言ってくれないとわからないよ」 散々弄られた尻孔が信じられないくらいにひくついていて。 決定的な快感が与えられなくて、頭がおかしくなりそうだ。

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