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山下友治 15

「かっこいいな、お前の彼氏」 理人が言うと、壮太はこくんと力強く頷いた。 実際、容姿もスタイルも申し分ない上、ベッドの上でも最強なのだから、もはやモテない理由が見つからない。 葵自身が好きだったのか、葵のテクニックの虜になっていただけなのか、今でもよくわかってはいない。 「どうしよう」 壮太はもぞもぞとしながら後ろからぎゅっとしてくれている理人に視線を送った。 「話聞いてたらうずうずしちゃった」 「いや、無理。オレに葵さんの代役は務まらない」 「理人ぉー」 頼まれたところで、今の壮太を満足させるのは友治にも無理だろう。 例えやったとしても、もう終わり?とか言われてしまいそうだ。それはへこむ。 理人も多分、同じようなことを考えていると思う。 「葵さんが起きてからいっぱい可愛がってもらったら?壮太がお願いしたら聞いてくれるでしょ?」 「そうだけどー……」 今、この疼きをどうにかしてほしい、という気持ちなのだろう。 その気持ちが理解できないことはないが、理人の言う通り、ここは葵の目覚めを待つべきだろう。 「で?」 突然、理人が視線を友治に向け、にやり、と口角を上げた。 「葵さんを忘れられない体に変えられてしまったんですか?」 「……え?敢えて聞いちゃう?」 理人はたまに意地の悪いことを言う時があるけれど、改めて、意地が悪いなぁ、と思ってしまった。 その問いを否定できずに無言を貫くしかなくて、だけど、結果的にそれが答えとなってしまっていて。 葵に何度も抱かれた壮太ならきっと理解してくれるだろうけれど、それを理人に求めるつもりはないので黙秘するしかなかった。 何度かタチ側はやったけれど、その度にカウンターを食らってしまったので言い返すことが何もできない。 「随分盛り上がってるね」 突然聞こえたその声に、リビングの空気が一瞬にして凍りついた。 皆が一斉に向けたその視線の先には部屋着であろうTシャツと長ズボンに着替えた葵が機嫌悪そうに立っている姿があった。 壮太にワイシャツをとられたから適当に着てきたのだろう。 おそらく話し声が聞こえたため、なるべく急ぎ足でやってきた、という感じだと思う。 葵はリビングで固まる三人の様子を伺った後、壮太に視線を移した。 「壮太、シャワー行っておいで。いつまでその格好でいるつもり?」 「はっ」 葵に指摘され、壮太は急いでバスルームへ消えていった。 葵はキッチンで水を一杯飲んだ後、で?と言いながらこちらに近付いてきた。 酔いは覚めたようだけれど、今の話、一体どこから聞いていたのだろう。 葵は理人の横に腰をおろすと、まるで人質でもとったかのように友治に無言の圧をかけてきた。 これは怒っていらっしゃるな、と友治の視線が彼方に泳ぐ。 葵の機嫌が悪そうなのを察知したのか、あの、と慌てて理人が口を開いた。 「大丈夫です、葵さんの武勇伝を聞いていただけなんで」 「武勇伝?」 おそらく理人と壮太には葵の格好いい過去話に聞こえたんだろうなぁ、と、少々悲しい気持ちになりながら、敢えて何も言わずにいた。 少し考えた後、葵は首を傾げた。 「それは、友治がオレに食べられる話?」 「おいやめろ、オレの威厳を少しは残せ」 「威厳、あるの?」 一回くらい年上としてガツンと言いたい。 が、この手の話題ではどうしても無理だ。正論しか言わない葵に勝ち目はない。 「で? 理人くんは、彼氏がオレに食べられちゃう話を聞いて、感じちゃったんだ?」 悪い子だね、と言われた理人は顔を真っ赤にして葵を見上げた。 全然気付かなかったけど、そういえば何となく下半身を隠しているような、気がしなくもない。 「か、……彼氏じゃ、ない。まだ、付き合って、ない、です」 「え?そうなの?」 意外だな、とこちらに視線を送ってくるので、頼むからその件に関しては放っておいてくれ、と視線を無言で跳ね返した。 「一応フリーなんだね。じゃあ、都合いいね」 「え?」 葵はにっこりと微笑んで、理人の腰に手を回した。 嫌な予感しかしない。

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