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孤独
颯に向けたこの感情は、「好き」では言い表せない。これはきっと「愛」だ。
全てを奪いたくなるほどの、愛だ。
だから合格発表の日、僕は神様を恨んだ。信じてすらいなかった神様を強く強く恨んだ。
なぜ彼を落として、僕を合格させたのかと。
なぜ大学なんてものに、僕らが引き裂かれなければならないのかと。
それが運命なら、僕たちが離れるのが運命なら、これは僕を殺す世界。
僕はまだ生きたかった。
でも生きるためには、颯が必要だった。
これは決して大袈裟なんかじゃない。ずっと僕の行動原理は「颯と一緒にいられるかどうか」だったのだから、それを失くしては行動すらできなくなる。
だから僕は、反抗をした。
『親友』という立場を生かして、僕は颯の個人情報を尽く抜き取った。学科、バイト先、そして住所。できるだけ同じでいられるように努力をして。
知るだけで動けない時間がもどかしくて、何度今日という再会の日を夢に見ただろうか。
本当に長い、長すぎる2年間だった。
「帰ってきたよ、颯」
ーー君の隣に。
颯がいる部屋側の壁沿いに置かれたベッド。倒れ込んで白い壁をそっとなぞる。
「悪い子だよね」
やっと君の隣に来たというのに、颯といったら。簡単に僕のことなんて置いていってしまう。僕よりバイトを優先して、僕よりも睡眠を優先する。それが普通なんてこと理屈では分かっているけれど、やはり悔しさが勝ってしまう。
奏多の存在だってそうだ。
僕が作れなかった新しい親友を、彼は何でもないように手に入れた。
それが羨ましいようで、寂しいようで、悲しくて。颯に手放されたような気がして、1人にされた気がして、気が狂いそうになる。
「ずっと一緒にいよう」って約束したのに。
一緒に居るべきは僕のはずなのに。
「颯は、僕だけを見ていて」
この壁など無くなってしまえばいい。そうしたら僕らは一緒に住んで、一緒に学校に行って、一緒に働いて。全ての時を一緒に過ごせる。
きっと僕は、颯の生活の一部になりたいのだ。
僕にとっての颯がそうであるように。
自分がどうしてこうなったのかは思い出せない。気付けば颯が隣に居るのが当たり前になって、目で追うのが日常になっていた。だからきっと、颯も同じだと思っていた。なのに何故。どこでこの差は起きたというのか。
差を埋めるためには、「どうすればいい?」
颯は知らないだろう。
僕が「颯と同じこと」にしつこいくらいにこだわるのは、嫌がられる境界線を探ろうと必死だからだということを。嫌がられなくて喜んで、でも颯からは近付いてくれないことに不安を感じ続けているということを。
颯は知らないだろう。
今夜僕がしようとしていたことを。金曜日に僕がしようとしていることを。もう僕が隣に居るだけでは満足できないことを。
颯は未だ、知らなくていいから。
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