5 / 10

第5話

 ヒュユン。  どうやら電子マネーの扱いに慣れてきたらしい、今日も今日とて黒尽くめのスキンヘッドの珍客はホットコーヒーをご購入される。 「コチラ残高とポイントです」  レシートを手渡しながら、果たしてこの作業は必要であるのかとても疑問に思う。  前回チャージした金額は単純計算三千回コーヒーを飲める料金。基本的に無闇に詮索しない本庄もさすがに眼を丸くして聞き返してしまった。毎夜来店している訳ではないらしいが、もしも一日一杯飲んだとしても八年以上。いくら好きだとしても果たして飽きないだろうか。そして入れ替わりの早いコンビニ商品の中で、ドリップコーヒーの販売はその年数行っているのか。  必ずしもココで、しかもコーヒーだけ買うとは限らないが。 「いつも静かだな」  くだらないことをつらつらと考えていれば、珍しく低い美声が掛けられ本庄の意識を戻す。 「夜は基本的に寝ていますから」  違う。違わないけれど、違う。  笑みと共に返しながら、セルフで自分の台詞に心の中で突っ込む。  確かに深夜は日中に比べると客足は落ちる。しかしココは近くに住宅地もあり大通りに近く利便性に優れている。ただ、珍客のウワサを知る近所の客は真夜中の利用を避けるし、もしも彼が来店している時に訪れた客はただならない雰囲気の先客を知って回れ右をするのを見たのは一度や二度ではない。しかも、同僚達には特別彼を怖がらない本庄が出勤していれば基本的にレジ対応を任され、いつの間にか暗黙の了解で専属とされている。ちなみに居ないとジャンケンで決めるらしい。そこまで怖いか、この男。  さすがにソレをわざわざ本人へ伝える理由もないため、しらばっくれる。 「夜バイトしている俺が言うのもナンですが、お客様もお身体大切になさってください」  彼が訪れるのは真夜中、購入はコーヒー。健康にとは行かないだろう。 「……君も。」 「ッあ、りがとう、ございました」  ドリップが完了した音と共に聞こえた呟きに、瞠目した本庄が返答できたのは彼の背が扉を潜ってからだった。

ともだちにシェアしよう!