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第2話
進行が滞りなく円滑に、進捗していく「対面式」。
俺の一年生に向けた挨拶が終わるとすぐに一年生の代表から言葉が送られる。
壇上に代表は上っていく。
だが、残念なことに、ソイツは小さく後ろまで姿を確認できるものはいなかった。
その証拠に全校生徒が「うわ、ちっせー」、「つか、俺らのとこまで見えねぇわ」と口々に言う。
俺はそれを壇上から見下ろしていた。
俺たちにはその間抜けな会話から跳び跳ねながら姿を見ようとしている滑稽な様まで、全て丸見えだ、と言わんばかりに。
壇上に上がってきた一年生は、緊張した面持ちで紙に綴られた言葉を読み上げる。
小さく儚い印象を受けたその姿から、まさに印象の合致とも言えようか。
透き通った脳裡に残る声を俺たち生徒に聞かせた。
真正面にいる俺が最初に震撼し、それが波紋のように広がり、悶えに悶える愚かなものたち。
そんなバカ共を知らずして、全文を読み上げたことの達成感で笑みをこぼす小さな華。
雰囲気としては、花弁が散っていく様子までもが見えた気がした。
彼は深くお辞儀をすると、淡々と段を降りもとの場所へ戻っていった。
この一連の動作に見いっていた俺は、全校生徒に対する苛立ちよりも、彼がいなくなったこの壇上にわびしい空気が纏っているのに酷く動揺した。
彼の名は「齊藤河南(かなん)」。
これが俺たちの最初の出会いだった。
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