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第5話

三船曰く、齊藤河南は成績トップで対面式の代表に選ばれたらしい。 そして、優等生を匂わせていることもあって、「生徒会長補佐」をさせるのには十分な建前だと。 目の前に自立した一本の花に、俺は単刀直入に切り出した。 「わざわざ来てもらって申し訳ないな。話というのは他でもない。俺の補佐をしてほしい」 「え、そんな役職ありましたっけ?」 「事実上ない。だが生徒会だけでする仕事としては、忙しすぎて困ってるんだ。代表として壇上に上がってきた齊藤に目をつけたんだが、ダメだったか?」 近くで見るとやけに唇の潤いが潤沢で、髪の毛も癖っ毛だ。 あと、心なしか女のような香水を振り撒いているわけでもなく、自然な花の香りがする。 この気付きに俺はまた、想いが膨張する。 早く匿ってやらなくては。 その前に授業中はどうする。 ここの教員も男だけで構成されているが、生徒に目を向けるような真面目なやつは少なく、安心ならない。 するとやはり、俺のそばに置いておく方が安全ではないか__。 「おい、泉。齊藤がOKってよ」 三船が齊藤の返事を言伝てに俺に伝えてくる。 それに少し苛立ちを覚え、三船を見ると「お前があっちの世界に泳いで行ったんだろうが。妄想激しすぎ」と釘を指したような顔をした。 「東郷会長、僕なんかでよければ、しっかりサポートさせてください!」 「会長なんて暑苦しいから泉でいい」 「あ、えと、はい……い、泉先輩!」 照れながらもにこやかに笑う姿を見て、内心で悶えた。それはもう、柄にもなく抱き締めて愛でてやりたい衝動最大限まで制御して。 隣で三船は平然としているが、アイツも内心では俺と同じことを考えているのか、と嫉妬心向きだしで舌打ちを小さくする。 「泉。俺は好きじゃない」 ため息をつき、俺だけの耳に届く声で弁解をする三船は、何でもお見通しなのだろう。 腹立つくらい。 しかし、俺の花はまた、あの時みたいに腰を二つ折に深々と頭を下げる。 そこまでしなくていいのに、これは彼のポテンシャルなんだろうな。 そう思えば胸が熱く感じて、未曾有の感覚だった。 俺はまだ、本気の恋愛というのを、まともにしていなかった気がする。 兎も角、俺の側近、齊藤河南が加わり俺の右腕は埋まった。 三船? そんなの知らねぇな。 「泉。お前が資料やデータの管理するか」 「すまない」 ぞんざいな扱いは厳禁だな。

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