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第8話side齊藤河南

運命的な出会い(勝手に思ってるだけ)をしてからまだ日が浅いある日。 副会長の三船先輩が僕を探しに一年の校舎までやってきた。 用件は言わず「三階の空き教室に来い」と僕の腕を強引につかんで歩き出す。 クラスメイト、と言ってもまだ友達はいないけど、やじうま達が興味津々に事の成り行きを見ていた。 三船先輩は「生徒会長がお前に用があるらしい。話だけでも聞いてやれ」と夢のような話を持ち込んでくれた。 ああ、この掴む手が、生徒会長「東郷泉先輩」なら……。 強引で、だけど優しく僕を気遣ってくれたりするのかな……。 もしかして、お姫様だっこなんかしてくれちゃったりして……! 名前だけに留まらず、僕は生徒会長のプロフィールをA4サイズの紙にぎっしりとしたためている。 もちろん、暗記済だ。 だからこそ、妄想が止まらない。 「齊藤。泉の前ではその顔はやめろ。気色悪い」 「泉……」 「んん。生徒会長の前では、穏やかにしてろ。いいな」 「はい!」 気付いてくれて、尚且つ訂正までしてくれるなんて、僕の敵じゃないみたいだね。 三船先輩は賢い人だな。 きっと、生徒会長の方がハイスペックだけどね! そうして三階の空き教室まで着いたけど、三船先輩だけ先に入り、僕は五分ほど待ってからノックしろと言われた。 僕は言われた通りにする。 敵じゃないって分かったし、味方だと思うし。 そうやって中に入ると、目の前に佇み漆黒の眼を一直線に僕に向ける生徒会長が、ニヒルな笑みを浮かべていた。 ぞくりと全身の毛がくりだつ感覚に身悶えた。 生徒会長はこんな表情もするのか、と色気が倍増した気さえする。 ニヒルな笑みを見せられてもこの感想しか持てない僕は、どんな表情の生徒会長でも「フェロモン」だけをキャッチしてしまうんだろう。

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