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第10話side齊藤河南

昼休みになって、僕は軽い昼食を取ると、そそくさと教室を抜け出し反対校舎を窓から眺める。 そこには恐らく図書室へ向かっているであろう泉先輩が歩いている。 あろうことか、一人で! 三船先輩とセットというイメージをこの一週間で植え付けられた僕にとっては、願ってもないチャンス。 さぁ、思いっきり迷うぞ! と言っても、歩き回る他なく、取り敢えず反対側の校舎までは来れたという設定で、動くことにした。 三年生の教室の前は、まだ新学期なりたてで受験モードではないらしい。 賑やかな雰囲気を感じる。 泉先輩が統べるその下には、こんなに素晴らしい人間関係が構築されていたなんて! 流石生徒会長であり、僕の最愛の人! 「あら、もしかして齊藤君じゃない?」 「おっと、マジだ。間近で見るのは初だな」 通りすがる三年生は奇々怪々な発言が時折聞こえたが、きっと泉先輩のクラスメイトの端くれだから、気にすることはない。 「ちょっとちょっと、俺ら、暇なんだわ~。一緒に学校探検しよーか。面白いとこたくさんあるよ」 髭ちょこで柄の悪くても、泉先輩の端くれだから__っ! 「良い穴場もしってんよ?」 「俺らとイイコト、しよっか」 「ひぁ……っ!?」 「お、良い声」なんて下卑た笑いをしながら、僕の尻を撫で上げる髭ちょことそのプリン頭。(金髪が伸びて黒い毛が生えてきてたからね) こんだけ泉先輩を渇望しているのにも関わらず、この初な反応をしてしまう僕は、実は済ませてない系男子だ。 だけど、今度は本当に身の毛がよだつ気持ち悪さ。 廊下で尻を触るなんざ、どんな痴漢プレイだ! 貧弱な力で抵抗をしていても、少しくらい様子が変だとか気づかないの?! 三年生の皆さん! 廊下に出てる人! ヘルプミーだよ!ここ! 「あー、残念。齊藤君、俺らにすっぽり隠されちゃってて周りからは見えないみたいだね?」 「すっぽり、ずっぽり、俺らと遊ぼうね~」 卑猥にいってみたとしても、悪寒が走るだけ。 本気で危機的状況を打破しないと。 僕は大声を出そうと肺に空気を溜め込む。 「おっと、声だしちゃダメだよ」 「ふぁぶっ!?」 口を鼻でしか呼吸できないまでに手で押さえられた。 そして、貧相な僕を髭ちょこは担ぎ上げ、移動する。 その際、お腹が髭ちょこの肩で圧迫されて、たったそれだけで声を出すことが難しいだなんて、そんなか弱い僕が恨めしいと、初めて後悔した。 「着いたよ~」 「さ、ここが俺たちの愛の巣となるんだよー、なんちゃって」 「うっわ、お前キモいわ」 お前たちの容姿こそ、もはやおっさんだろ!この髭ちょこ!

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