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第12話side齊藤河南
もう、前戯は済んだんじゃないかな。
身体中髭ちょことプリン頭の汚い唾液のせいでベタベタだ。
最悪だ。
「ねぇ齊藤くーん。ちょっと喘いだらどうなの~?」
「泣き顔も悪かねぇけどよ~」
嗚咽も混じった僕をいつまでも犯し続けるお前たちの下衆さにはほとほと呆れるよ。
もぉ、明日からゴリゴリに鍛えてやる。
そんな無駄な誓いは本当に無駄で。
髭ちょこがスラックスのチャックを下ろす。
ゆっくりと下ろす様は、これから起こる行為の恐怖を掻き立てるようで嫌いだ。
玉のような汗が身体中に降ってくる。
背けていた顔を正面に戻せば、興奮して汗をたぎらせている髭ちょこの余裕のない顔がそこにあった。
さっきまではプリン頭と会話するくらい余裕ありげだったのに__!
いよいよ、来るのだと。
そう、思わせる髭ちょこの顔が、最高に、ヘドが出る。
「楽しそうだなぁ~俺も混ぜろよ」
「んぁ?」
「図書室の入り口で襲うなんて、間抜け丸出しだね」。そう言ってる顔が見てとれた気がした。
でも、誰だろう。
「お前誰だか知んねぇけど、参加するなら三番目な。ほら、こっちこいよ。身体でもいじってな」
「そりゃどーも」
黒髪で爽やかな人は、微笑みながらこっちに近寄ってくる。
僕はこの人が救世主だとばかり、思っていた。
淡い期待としては、泉先輩かな、なんてことも思ったのに。
だけどそれは検討違いのようで、歩み寄ったその人は、僕の身体を横から舐めるように見つめ出す。
ドン底だ。
顔面蒼白する僕をよそに、プリン頭は「んじゃあ、新入り交えたところで再開しますか!」と髭ちょこの行為を促した。
「あー、やっぱ俺からさせろ。相当お前の辛そうだが、俺の前戯を見て一回だしてろ」
黒髪の爽やかな人は黒縁眼鏡をして、髪の毛もきちんと整えてたら、まるで泉先輩だなぁ。
「んな生殺しなことすっかよ!」
「お前はこんなに汚く泣きながらされるコイツを見ろよ。可愛く喘いでくれた方が、こっちも興奮するし、何よりコイツに似合ってると思わないか?」
「確かに」
「するはするでも、お互い気持ちよかった方が犯されてるという概念を捨てるかもだぞ」
「おお、お前賢いな。名前知らねぇけど」
泉先輩もこの黒髪の人のように、艶かしく僕を抱いてくれるのかな……なんちゃって。
「俺には自信がある。今からこの顔を劇的に変化させてやるから、見てろ」
「今にもはち切れそうだが……くっ、しょーがねぇ」
目の前の闇が、サァァ、と道が開けるように、光を通していく。
そして、一筋通った光は、再び、黒髪の爽やかな人によって、閉ざされる。
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